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栽培こよみ 第49回

 
 薬狩り 春の七草の採集
 
 推古天皇が大和の兎田野で薬狩りをしたことが日本書紀に記されています。
山野に遊んで薬草を採集することを薬狩あるいは競駈と云い、はじめは鹿や雉
などを採っていましたが、殺生を忌み百草を採るようになったそうです。
 写真は農業世界(昭和13年)に掲載された「光
明皇后薬草御採取の図」ですが、きっと光明皇后
もこのように薬草を採集されていたのでしょう。
 当時は今ほど野菜がなかった時代であったか
ら、山野の摘み草が食料になっていたのでしょう。
 そのころの摘み草の歌がいくつも残っている
ことからも推察されます。
 さて、今日は春の野に出て、薬狩りをしてみま
しょう。
 
 古くからお正月に七草をお粥に入れて食べる
風習があります。この風習は第五十九代天皇、宇
多天皇の頃から始まったと言われています。
 春の七草とは、セリ、ナズナ、オギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、
スズシロこれぞ七草と教わり、覚えたものです。どれも、どこにでも生えてい
る薬草や野菜です。
 そもそも七草は誰が定めたのでしょうか。はっきりとは分からないのですが、
金井紫雲の著書「草と芸術」には四辻左大臣が定めたとありました。
 
 セリは田の畔のように、水気のあるところによく生えています。水田で栽培
されたものよりも、野生の方がずっと香りが高いそうです。
 
 ナズナは路傍や畑で見つけることができます。地面にへばりつくように葉を
四方に広げているので、見つけやすいと思います。花が終わると三味線の撥の
形をした果実をつけますから、ペンペングサとも言われています。
 日頃ナズナを食べる機会は少ないですが、パック入りのナズナが道の駅で販
売されていましたから、食べている地方があるようです。日本食品成分表を見
ても、他の葉菜類と比べてもタンパク質やカルシウム、カロテンやビタミンC
も多く含まれています。
 
 オギョウはハハコグサのことです。葉には白い綿毛が一面についています。
チチコグサに似ていますが、オギョウの花は黄色ですから区別ができます。
 
 ハコベラはハコベの古名です。寒い今ごろも田や畑地で緑色の新しい葉を四
方へ伸ばして、白い花をつけていました。むかしはこの草を焼いた灰に、塩を
混ぜて歯磨き粉に使ったそうです。
 ハコベのお浸しは独特の風味があっておいしいものです。
 
 ホトケノザはキク科のコオニタビラコのことです。シソ科にホトケノザとい
う名の植物がありますが、これは七草のホトケノザではありません。ホトケノ
ザについては植物学者の牧野富太郎の著書「植物記」に、小野蘭山はムラサキ
科のタビラコ(キュウリグサ)をホトケノザとしているが、これは間違ってい
ると云っています。
 シソ科のホトケノザもムラサキ科のタビラコも、煮て食べるとまずくて、と
ても食べていたとは思われないというのです。
 
 スズナはカブのこと、スズシロはダイコンの別名ですが、どちらも野生のも
のはありませんから、近くの八百屋か、スーパーマーケットで買うことにしま
しょう。
 
 春の七草は、近くの田や畔にたくさん生え
ていますから、栽培する植物でもありません。
でもこの日のために日頃よく通る道端に見
つけておいたので、すぐに集めることができ
ました。
 また、カブとダイコンは、秋に種を蒔いて
おきました。
 
 七草が揃えば、この七草を入れて粥をつくり、また、汁に入れて食べて邪気
を払い、今年もよい年でありますようにと祈ります。
 

(2012年1月1日)