稗(ひえ) イネ科 |
9月になったとは言え、まだまだ暑い日が続いています。そこで少しでも涼 |
しく感じるように「稗蒔き」を楽しみましょう。 |
稗まきとは、国語辞典に「鉢に綿などを敷いて水に浸したものにヒエなどを |
蒔き、その幼苗を青田の様に見せる盆栽」とあります。 |
稗の種を鉢に蒔いて、水を与えて発芽させたものです。5〜6センチに成長した |
葉の緑を眺めて楽しみます。葉に打ち水をしたり、また、風にそよぐ葉を眺め |
て涼を感じるのです。 |
稗蒔きのことを知ったのは、昭和の初めに発行された園芸書に紹介されてい |
たのです。その本には古く江戸時代から庶民の園芸として楽しんでいたと書い |
てあります。当時は夜店で売られていたり、これを売り歩く人もいたそうです。 |
若月紫蘭著、東京年中行事に「それから四月も半過ぎになると、渋い渋い透 |
き通るような声をして、妙な調子で『稗蒔や稗蒔』と長く長く引張って呼び売 |
りする行商がある」と稗蒔き売りのことが紹介されています。 |
今月は稗蒔きを再現して江戸時代の風流を楽しむことにしましょう。 |
稗の種は大きな園芸店などで取り扱 | |
っています。今回は、ホームセンターの | |
ペット売り場で小鳥の餌として販売さ | |
れていたのを買いました。100円余の小 | |
袋を買えば、数鉢の稗蒔きには十分あり | |
ます。 | |
その他に必要な鉢皿、培養土、綿、飾 | |
りの人形などはすべて100円ショップ | |
で揃えました。もちろん不要になった食 | |
器でもよいのです。この方が却って面白 | |
いものができるかもしれません。 | |
培養土も市販の園芸培養土、赤玉土、 | |
綿、ヤシ殻培土などいろいろ使ってみま | |
したが、ほとんど同じ結果ですから、発 | |
芽させるだけならばどれでもよいとい | |
うことです。 |
まず鉢に写真のように培養土を薄く敷き詰めます。そして十分に水を含ませ |
ておきます。その上に稗の種を蒔くのです。種はできるだけ密に、そして重な |
らないように蒔きます。 |
蒔き終えると、鉢を直射日光の当たら | |
ない明るいところへ置きます。今の時期 | |
の温度だと2〜3日もすると種は一斉に | |
発芽を始めます。 | |
培養土が乾くようであれば水をジョロ | |
などで静かに補充します。 | |
稗蒔き売りの鉢には焼き物の鷺、百姓、 | |
帆掛け船、橋などをあしらって田舎の風 | |
景を作ったようです。 | |
写真はグラタン皿と大きな貝殻に蒔い | |
た様子です。これに飾りの人形を置いて | |
みました。 | |
ぜひ薬局の飾りにお使いください。 | |
(2012年9月1日) | |