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栽培こよみ 第59回

 
 ヤマシャクヤク ボタン科
 
 郵便局へ手紙を出しに行ったとき、最近発売された切手が窓口にたくさんぶ
ら下げてあった。中に植物の切手が数枚あって、その中の1枚のベニバナヤマ
シャクヤクが目に留まった。これは珍しいと、早速1枚を買い求めた。
 
 ベニヤマシャクヤク ヤマシャクヤク
 ベニバナヤマシャクヤクとヤマシャクヤク
  
 ヤマシャクヤクは花や姿が園芸種のシャクヤクに似ているから付けられた名
で、花の色は白い。ベニバナヤマシャクヤクの方は花の色が紅色をしている。
 どちらのヤマシャクヤクも、今は薬用としてはほとんど使われていないが、
古い薬草の本には、地下茎を乾燥したものを煎用して痰、咳、喘息を治し、解
熱剤として使われるとある。アイヌ人は根を痛み止めとして、また、眼病や耳
病に用いたことなどが書いてあった。
 
 ヤマシャクヤクの方は山歩きでポツ
ヤマシャクヤクの花

ヤマシャクヤクの花
リと林床に咲いているのを何度か見か
けたが、最近はそれも見ることが無くな
ってしまった。
 ところが山で見ることが無くなって
も園芸店、中でも山野草を取り扱う店で
は難なく手に入る。実生でよく増えるか
ら、価格もそれほど高価なものではない。
しかし、ベニバナヤマシャクヤクの方は
数が少なくて白花のヤマシャクヤクよりも高い値段で販売されているようだ。
 
 栽培するには秋の今頃の植え替えが最適であるから、苗が市場に流通している
と思う。市販の苗は小さなビニールポットに入ったものが多いから、大きな鉢
へ植え替える。鉢は6,7号の深鉢を用いるのが良い。培養土は赤玉土と桐生砂
か鹿沼土を等量混合したものに、腐葉土を1,2割加えたものを用いる。
 
 まず、鉢穴に鉢底ネットを敷き、
市販のヤマシャクヤクの苗

市販のヤマシャクヤクの苗
大粒の培養土を鉢の中ほどまで入れ
ておく。ヤマシャクヤクはポットか
ら出して根の周りの土をざっと落と
す。用意した鉢へヤマシャクヤクの
根を置いて配置を決める。芽が土の
表面に出ないように配置する。覆土
が2,3センチあればよい。位置が決
まれば残りの培養土を鉢の縁まで入
れて、鉢底をトントンと軽くたたい
て培養土を落ち着かせる。水を十分
に与えて植え替えは終わる。
 鉢の置き場所は、春まではよく日の当たるところがよいが、真夏は直射日光
を避けるようにして樹木の下などの半日陰になる場所へ移動する。
 
 出来るならば鉢植えよりも庭に植えると日頃の管理は楽になる。木漏れ日の
射すようなところで、水はけのよいところを選んで植える。
 先に腐葉土や堆肥を鋤き込んでおいて、土の表面に新芽が出ないように配置
して植えつける。
 
 ヤマシャクヤクは肥料を好むようであるから、新芽の出る時期と、花後に油
粕と骨粉の団子や緩効性肥料を少量与える。また、薄くした液肥を秋の休眠の
前まで、月に1,2度与えるとよい。
 
 ヤマシャクヤクは花もきれいだが、秋に?果が割れて赤い果肉の中に瑠璃色
の丸い種子が付いている様子がとてもきれいなのである。増やすにはこの種子
を蒔くとよいが、開花は4,5年先になる。
 

(2012年11月1日)