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栽培こよみ 第65回

 
 エビネ ラン科
 
 毎年、5月の連休が始まると忙しくなる。その理由は各地の植物園などで開催
されている山野草展を見て回るのを楽しみにしているからである。山野草の中
には薬草になるものがたくさんあって、その栽培方法などに工夫されているも
のがあり、参考になることが多い。
庭に植えたエビネ

   庭に植えたエビネ
 
 エビネは日本の山野にたくさん見ら
れたラン科植物である。しかし最近は山
ではめったに見ることは無い。ところが
人工交配によって、今まで山にはなかっ
た新品種が続々と誕生して、山野草展を
賑わしている。
 ラン科植物は、たくさんの種子ができ
ても、自然界ではラン菌の助けがないと
発芽も生長もできない。ところがラン菌が無くても生長させることが出来る無菌
播種という方法が普及したから、新品種の花をいくらでも作れるようになった。
 エビネはもともと日本の植物であるから、洋ランのように温度がいらないし、
ランの中でも作りやすいから人気の花である。庭へ植えても、鉢で栽培しても
きれいな花を楽しむことが出来る。
 
 山野では谷筋などで、雑木や杉林のような木の下に自生している。そこは近く
に小川が流れていて、比較的空中湿度の高い環境を好むようである。したがっ
 
て、庭植えにすると
 
きは木漏れ日の射す
ようなところへ植え
ると、何ら手入れす
ることもなく、毎年、
花を咲かせてくれる。
 鉢植えでも、花の
時期は玄関などの室
内に置いて楽しんで
いるが、花が終われ
ば日陰に移動して栽
培するとよくできる。
 
 さて、植え替えなどの作業は、花が咲き終わった今頃が一番良い。エビネは
これから根を伸ばして生育期に入るからである。
 植木鉢は4〜5号のプラ鉢で良いが、室内に持ち込んで花を観賞するには丹波
鉢などに植えるとよく似合う。培養土は赤玉土、鹿沼土、日向土を等量混合し
た土に、腐葉土や堆肥を1割ほど加えて用いている。
 まず鉢底へネットを入れてから、鉢の半分程度まで培養土を入れる。一方、
植え替え時期が来た鉢植え、新芽が鉢の縁まで成長して植え替えをする鉢植え、
株が込み合って株分けをしたい鉢植えなどから株を取り出す。
 取り出したエビネの根茎はバルブと言い、丸い球が一列に長く連なっている。
この様子を海老に見立てて海老根の名がついたようである。
 株分けをしたいときは、新芽を含めてバルブが3球以上になるように分ける。
小さく分けると、株数は増えるが翌年に花が咲き難くなる。
 
植え替え終えたエビネ

   植え替え終えたエビネ
 枯れた葉や根など整理して、鉢の中に
配置してみる。今年新芽が出るのは花が
咲き終えたバルブから出るから、新芽が
出た時に鉢の中心へ出るような位置へ
配置する。さらに培養土を加えて行き、
バルブの上部が少し見える程度にする。
 十分に水を与えてから、発酵油粕のよ
うな緩効性肥料を数個鉢の隅に置いて、
日陰で管理する。肥料は春と秋にも与え
ると花が良く咲き、株もよく増える。
 庭に植えるときは、木漏れ日が当たるようなところを選ぶ。家の北側の日陰
地でもよく育つ。植える前に堆肥を入れてよく耕して置き、バルブの表面が土
から少し見える程度に土をかけておく。
 
 中国の薬草図鑑には、民間薬として使われているエビネの種類があるようだ。
最近、日本でも育毛剤にエビネの成分が入っていると書いた広告を見た。

(2013年5月1日)