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栽培こよみ 第66回

 
 ツリガネニンジン
 
 ツリガネニンジンは、花が釣鐘の形をして、根が人参のようなところから付
けられた名です。自生地は北海道から九州までの山野に、中でも比較的日当た
りのよいところによく見られます。
 夏の頃、株の中心から高さ1mほどにも茎を伸ばして、多数の釣鐘型の花をつ
けます。花は青紫色で、開くとめしべが伸び出して正に小さな釣鐘のように見
えます。
 ツリガネニンジンの別の呼び名をトトキと言うのだそうです。たくさん自生す
る地方ではよく知られている呼び名らしくて、広辞苑にも載っています。
 「山でうまいはオケラにトトキ・・・」
道の駅で買ったトトキです

   道の駅で買ったトトキです
と、歌に詠まれているほどです。
 
 昔読んだ本にも、トトキは山菜の中で
もとても美味しい植物であると書いて
あったのが記憶にあって、いつかは食べ
てみたいと考えていました。それで1株
を手に入れて鉢植えで栽培していたの
ですが、1株しかない鉢植えの株を食べ
る勇気はありませんでした。
 ところが先日、そのトトキを旅先でたくさん食べる機会がありました。若い
芽を茹でてカツオブシを振りかけた簡単な調理だそうですが、それほど癖がな
く、とっても美味しくいただきました。
 
栽培中の鉢植え、今年は2芽になりました

  栽培中の鉢植え、
今年は2芽になりました
 ツリガネニンジンの苗は、山野草店、道の駅や
種苗会社の通信販売で手に入れることが出来ま
す。だが、何時でも売られている種類のものでは
ありませんが、春の植え替え時期などに市場に出
回ることがあります。
 
 植え替えなどは芽の出る前が良いので、3月頃
になります。庭に植える場合はよく日の当たると
ころが良く、自生地でも田の畔や土手などに生え
ているのをよく見かけます。
 
 
 よく似た植物にソバナがあります。ツリガネニンジンは葉が3,4枚輪生する
こと、花が釣鐘状であること。一方、ソバナは葉が対生であること、花の先が
漏斗状に広がることで区別できます。
 
 鉢植えにするには、株がまだ小さい時は5号ぐらいの駄温鉢が良く、大株に
なれば10号ほどの大きな鉢に植え替えるように、根の大きさに合わせます。
 培養土は特に選びませんが、いつも用いている園芸培養土や、赤玉土、鹿沼
土、日向土の等量混合した培養土に、堆肥か腐葉土を1割ほど加えて用いるの
が良いでしょう。
 鉢の置き場所はよく日の当たるところが良いのですが、真夏だけは半日陰の
ところへ移動します。
 灌水は、極端に過湿や乾燥状態にならないように気を付けます。
 肥料は、株が成長する時期や、花後に緩効性化成肥料や油粕と骨粉の団子を
与えます。
 
 ツリガネニンジンは古くから薬用や食用に利用されていて、薬用には根を鎮
咳、去痰薬として用います。根にはサポニンを含むことから、人参の代用品と
しても用いられたようです。
 食用には新芽を摘んで、お浸し、胡麻和え、てんぷらなどに利用します。若
葉だけでなく、根も食べられるようで、煮物や胡麻和えなどにすると美味しい
そうです。
 

(2013年6月1日)