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栽培こよみ 第70回

 
 クミスクチン
 
 ネコノヒゲという風変りな名のついた鉢花が園芸店で売られていた。花は咲い
ていなかったが、葉の形や草姿からシソ科のクミスクチンという植物であるこ
とが分かった。マレー語でクミスは髭のこと、クチンは猫のことであるから、
なるほどネコノヒゲという意味になる。
クミスクチンの鉢植え

クミスクチンの鉢植えとその花

クミスクチンの花  
 
 東南アジアではよく見る植物で、コタキナバルのサンデーマーケットでも地上
部を束ねたものがよく売られている。朝早くに市場に行くとその商品がうずた
かく積んであったものが、市の終わる昼ごろにはほとんどがなくなっている。
買う人が相当いるのであろう、もちろん煎じて飲用に使うために売っているの
サンデーマーケットのクミスクチン

サンデーマーケットのクミスクチン

である。おばさんに聞くと、いろいろな
病名を挙げて、よく効くよと教えてくれ
た。
 マーケットではクミスクチンの鉢植
えも売っている。それに、郊外に出れば
家の庭にも植えられていたりするから、
現地ではよく知られた薬草なのである。
 
 
 マレーシアの薬草の本に、クミスクチンを煎じて服用すると腎炎、膀胱炎、
結石、高血圧などに効果があると記されていた。
 
 クミスクチンは熱帯原産で、丈夫な植物ではあるが寒さと水切れには弱い。
しかし、最近の家は気密が良くて、冬の居間は最低温度が10度を切ることが少
ないと聞くから、窓際に置くなど工夫すれば温室がなくとも越冬できないこと
は無い。そんな時に備えて大きくなった鉢植えでも、小さな株に仕立て直して
おくと管理が一層楽になる。
 今月はこのクミスクチンを挿し木で増やして、小さな株にしてみることにし
よう。
 
挿し木で増やす
 挿し木は、株の一部を切り取り、下端を土に挿して不定根を発生させて新しい
株を作る方法である。この方法は遺伝的に親と同じ個体をたくさん増やすには
都合が良い。クミスクチンはこの挿し木
種まき培養土・ジフィーセブン

種まき培養土・ジフィーセブン

で簡単に増やすことができる。
 
 挿し木の用土は、赤玉土や鹿沼土、あ
るいはバーミキュライトが用いられる。
これらの用土はほとんど雑草の種子や
雑菌などを含まないためである。
 また、これらの用土に変わるものに種
まき培養土・ジフィーセブンという便利
なものがある。使う前に水に浸けると数
倍に膨れ上がって忽ち培養土ができる。
 今回はこれを使って挿し木をしてみよう。この培養土はほこりなどが立たな
いから室内でも作業ができる。近くの園芸店やホームセンターなどで手に入る。
 
 使い方は、まずジフィーセブンを水のたまるお皿に入れて水に浸ける。1時間
ほども経過すると培養土は十分に膨れていると思う。膨れるまでに挿し穂を準
備しよう。
挿し穂

挿し穂

培養土に挿した様子

培養土に挿した様子

 
 
 挿し穂は、枝先などを数センチの長さに切り取り、しばらく水に挿して十分
に水を吸わせておく。次に挿し穂の下側の葉を2枚、あるいは4枚切り取る。
挿し木は切口に発根促進剤の粉末を付けると一層効果がある。この発根促進剤
は園芸店で売られている。水を付けた切口に発根剤を付ける。粉が落ちないよ
ペットボトルなどで湿度を保つ

ペットボトルなどで湿度を保つ

うに培養土の中 培養土から白い根が出てきた

培養土から白い根が出てきた

 
心に爪楊枝など
で穴をあけて、そ
こに挿し穂を挿
す。
そして明るい日
陰に置いて、乾き
すぎないように
時々、水を与える。
また、湿度を保つ
ためにペットボ
トルなどで覆っ
 
 
てやるのもよい。しかし、蓋に隙間をあけておくなどして中が高温にならない
ように注意する。
 挿し木をしてから10日も経過すると用土から白い根が出てきた。発根したも
挿し木で増えた株

挿し木で増えた株

のはこのまま少し大きな鉢に園芸培養
土で植える。
 今回は5本挿し木をして5本とも発根
したから5株に増えた。
 
 もちろん、この挿し木の方法は他の植
物にも応用できる。しかし植物によって
は挿し木に適した時期があるから調べ
て行う必要がある。

(2013年10月1日)