ホーム > 漢方・生薬について > 栽培こよみ > 栽培こよみ2014年 > 第81回 ゲッケイジュ クスノキ科

栽培こよみ 第81回


 ゲッケイジュ クスノキ科

 月桂樹(ゲッケイジュ)は地中海沿岸地方の原産で、クスノキ科の常緑樹である。
この木の枝葉を用いて環を作って冠とし、競技の勝者に贈られることはよく知
られている。わが国では庭木として植えられるが、
ゲッケイジュ クスノキ科
縁起の良い植物とされているから記念樹として
植えられることが多い。
 春、4月頃に葉腋に黄色い小花を密につける様
はなかなか綺麗である。雌雄異株であり、日本で
栽培されている木は殆どが雄木らしい。葉は光沢
のある緑色で傷をつけると芳香があり、香辛料な
どに利用される。乾燥した葉を数枚袋に入れたも
のが食品店で売られているが、1株栽培して置け
ばいつでも必要な時に使えるから便利である。
 萌芽力が強いから伸びた枝を刈りこんで卵形
や円錐形など好みの樹形にしてもよいが、自然に
放置しても整った姿で成長する。

 栽培は粘土や砂土を除けばほとんどの土壌でよく生育する。庭に植えるには
よく日の当たる方が良い。また、鉢植えで栽培することもできる。
 増殖は実生、株分け、取り木、あるいは挿し木ができる。実生の場合は春播
きにするが、わが国で雌木が少ないから種子を手に入れることが難しい。
 挿し木は適当な管理ができれば年中可能と本にあるが、普通は9月頃に今年
伸びた新芽を用いて挿し木をすればほぼ活着するようだ。

 挿し木の方法は、まず適当な大きさの浅鉢に赤玉土の小粒を入れる。そして
挿し床に赤玉土の小粒
 挿し床に赤玉土の小粒、と挿し穂
挿し穂  
ジョロで水を撒いて湿らせておく。

 一方、挿し穂を準備する。9月頃に挿し木をする場合は今年伸びた枝を用いる。
挿し穂を土に挿した様子
 挿し穂を土に挿した様子
枝を15〜20?ほどの長さに切り取り、
1時間ほど切口を水に浸けて置く。次に
挿し穂の下部の葉を取り去り、先に残し
た葉が大きな場合は半分に切り取る。
切口に発根剤をつけてから土に挿し、5
?ほどを土に埋める。発根剤が落ちない
ように、割りばしなどで下穴をあけて挿
すとよい。

 挿し木した鉢は強い光を避けて日陰に置く。空中湿度を保つために鉢より大
きな受け皿に入れて少量の水を皿に入れておくとか、あるいは透明のビニール
袋を全体に被せておくのもよい。年内に発根を見るが移植は春に行う。
 挿し木以外に増殖する方法に取り木ができる。取り木とは枝の途中から発根
を促して苗を得る方法である。
 4から5月頃、取り木する枝の一部を環状に2〜3?皮を剥き、湿らせたミ
ズゴケを卵状に被せてしっかり巻いて置く、その上をさらにビニールで覆い、
取れないようにひもで縛る。夏頃には発根する。ミズゴケのあいだから根が見
えるようになれば十分発根しているから、親木から切り離してコケをつけたま
ま鉢植えにして管理する。

 木にはアブラムシやロウムシがついて、スス病が発生しやすいから注意する。
葉にススが付いたように黒くなる病気で、アブラムシなどの排せつ物にスス病
菌がついて生じる。
 肥料は新芽が動き出す前に、油粕や化成肥料を適量与える。
 ゲッケイジュは樹形が整っていて鑑賞樹としてもよく、香辛料にもなる優れ
ものである。

(2014年9月1日)