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栽培こよみ 第90回


 ギョウジャニンニク ユリ科

 ギョウジャニンニクとは、なんとも不思議な名前がついているものだ。広辞
苑には「深山に生じ、行者が食べるから言う」とある。昔から修行するお坊さ
庭に植えたギョウジャニンニク
 庭に植えたギョウジャニンニクとその花
んたちの食材として知られていたらしい。
 未だ山で生えているのを見たことはな
いが、春、早くに信州を旅していると道
の駅やスーパーなどでたくさん売られて
いる。ギョウジャニンニクの伸び出した
新芽を束ねて容器に入れて売っている。

ギョウジャニンニクの花

 最初に見た時は名前も、食べ方も分からなかったが、ある時、たくさん買っ
ているおばさんに、どうして食べるのですかと尋ねてみた。
道の駅で売っているギョウジャニンニク
 道の駅で売っているギョウジャニンニク
 簡単には細かく切って豆腐や素麺
にかけてもよし、さっと茹でて、醤油
やマヨネーズをかけて食べてもおい
しいよと教えてくれた。他にも天ぷら
や汁の実、味噌和えや炒め物など、使
い道はたくさんあるという。
 帰ってから早速試してみた。少々、
ニラやニンニクのような匂いはある
がそれほど強くなく、歯ごたえもあっ
てなかなかおいしい山菜である。

 最近では機能性成分が研究されるようになって、疲労回復や滋養強壮効果の
他にも優れた薬効があることが分かってきた。
 日本食品標準成分表にも掲載されていて、もう立派な野菜であるとも言える。

 さて、栽培はそれほど難しくないが、なかなか増え難いのが難点。増殖は種
を蒔くか、株分け、あるいは株が大きくなってくると不定芽からも増やせるら
しい。しかし、株分けが収穫までの時間が最も早いから一般的である。
 まず最初の1鉢は手に入れる必要があろう。春に野菜苗などと一緒に売って
いるのを買い求めたが、通信販売のカタログに掲載されていることもある。

 栽培は鉢植えもできるが、食べるほどに栽培するには多くの株が必要となる
から大きな鉢に植えるか、畑や庭に植えることになる。山では林床に生えてい
るというから、植えるところは木陰がよい。毎年植え替えることもないから、
初めに堆肥を多く入れておく。施肥も効果があるようだから多めに与えるとよ
く増える。秋には地上部が枯れて休眠期に入る。株分けや植え替えはこの時期
が良い。

 春になるといよいよ収穫の時期になる。新芽が伸びて葉が展開したころに葉
を刈り取るのだが、必ず1芽につき1,2枚を残すようにしたい。さもなければ
株が弱ったり、枯れてしまうことになる。
 最近はウドのように茎の部分に日を当てないで栽培する方法も行われている。
もみ殻などを数センチほど新芽が出る前にかけておき、もみ殻から葉が出たと
ころを収穫する。すると茎の下部が白くて中間部は赤く、葉が緑色をした三色
のギョウジャニンニクができる。一段と高級な食材として出回っている。

 今頃になると小さな花が集まった球状になって咲く。ボールのような白い花
もなかなかかわいいものだ。今年は種子繁殖にも挑戦してみたい。

(2015年6月1日)