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栽培こよみ 第95回


 ハクラン アブラナ科

 ハクランとは白菜とキャベツの種間雑種でできた野菜の名です。白菜(ハクサイ)の
ハクとキャベツの別名である甘藍(カンラン)のランから付けられた名のようです。
 普通、遠縁の植物同士を交配して新しい品種を作ろうとしても、染色体数が異なるため
種子ができるまでに死んでしまいます。ところが受精直後に種子の素になる胚を培養す
るとそのまま生長する場合があります。この方法を胚培養と言って、新しい植物を作る
一つの方法です。
種子の入った絵袋  ハクランは昭和30年代に胚培養で誕生し、当時は大
変話題になった野菜です。それからはあまり作られな
かったようですが、最近になってその種子が園芸店や
通信販売でも買えるようになりました。

 種子の入った絵袋には「ニューハクラン、育成過程、
キャベツと白菜の種間雑種として昭和33年に農林省
園芸試験場で創出され、昭和37年、39年、42年に各
組合せの複二倍体種子の分譲を受け、種子稔性の高い
耐病性と形質の均等性と結球率の高いF1組み合わせ
を目標に、系統選抜を行って育成したものである」と
あります。
 また、特性は、「肉質はキャベツとハクサイのほぼ中間で歯切れよく甘味があってみ
ずみずしく柔らかいが、煮崩れしない。サラダ、煮食用、漬物用、いずれの料理にも向
く持ち味が特徴である。・・・・・」と ハクラン
書いてあります。

 作型は、播種が7月中旬から8月上
旬。移植適性が高いので小鉢や紙筒で
20~30日育苗し、8月末までに畝幅75
㎝、株間40㎝の栽植密度に定植する。
と記載されています。

 7月になって、小さなポットに市販の播種用培養土を入れて種を蒔きました。発芽し
て2~3㎝の大きさになれば少し大きなポット2.5号へ一本ずつ移植します。
 苗が大きくなるまでの間に、畑には元肥として油粕や化成肥料などをすき込んでおき
ます。
 葉が5~6枚展開したころ、苗を株間40㎝になるように畑に移植します。そして十分
に水をやります。苗が活着するまでは水切れしないように管理します。

 株が活着して葉が伸長を始めたころに、化成肥料(8:8:8)一つまみほどを株元に
ハクラン 与えます。
 9月~10月でもモンシロチョウなどが
飛んでいますから、幼虫に食べられない
ように注意します。家庭菜園ではできる
だけ農薬を使いたくないので時々見回る
ようにします。もし虫に食べられた跡や
虫の糞があると必ず近くに潜んでいます
から見つけて捕殺します。

 株の直径は70~80㎝ほどにも大きくなり、11月に入ると株の中心が白菜のように巻
いてきました。見たところ姿はキャベツよりも白菜に似ているようです。
 和漢薬草大図鑑にキャベツはリジンに富み、ビタミンCが多く、胃潰瘍、十二指腸潰
瘍に有効なビタミンUを含むとあります。さて、このハクラン、成分はどのように変わ
ったのか興味があるところです。
 最近、種苗メーカーではバイオテクノロジーを利用した新品種の野菜を売り出してき
ました。キャベツXコマツナ、トマトXジャガイモ、ネギXニラなどたくさんあります。
また、カロチンやリコピン、ルチン、アントシアニンのような機能性成分を多く含む品
種を作って売りだしてきました。
 これからは、野菜も色や形とともに成分も考えてつくるようになるのでしょうか。

(2015年11月1日)