ホーム > 漢方・生薬について > 栽培こよみ > 第99回 チョウセンゴミシ マツブサ科

栽培こよみ 第99回


 チョウセンゴミシ マツブサ科

 数年前のことになるが、里山のガイドブックに「山の麓にはチョウセンゴミシ
がたくさん見られる」という記述があったので、その山に行ってみた。ところが
登山道を歩いて行けども行けども1株のチョウセンゴミシも見つけられなかった。
しかし、その時期はちょうどトリカブトの花盛りで、麓から頂上近くまで、あち
こちにトリカブトの花を見ることができて十分楽しんで帰ってきた。
 
 チョウセンゴミシは中部地方から北海道まで分布する。ツル性植物で自生地で
は近くの木に巻きついたり、地面を這うように生育している。わが国に自生して
いるにもかかわらずチョウセンゴミシと呼ぶのは何故なのか。その訳は、享保の
頃に朝鮮から伝えられたことからチョウセンゴミシの名が付いたようであるが、
明治になってわが国にも自生していることが分かったということらしい。また、
ゴミシとは乾燥した果実の味が五味あることから付いた名である。
チョウセンゴミシの畑栽培
 チョウセンゴミシの畑栽培と実
チョウセンゴミシの実
 
 チョウセンゴミシの苗は園芸店や通信販売で買うことができる。中でも山野草
などを扱う販売店ではよく見かける。
 図鑑には雌雄異株とあるから、実をつけるには雄木と雌木の両方が必要になる。
雌雄の判別は茎や葉からは分からないが、花を見れば分かる。
 栽培途中で雄雌が変わることがよくあるらしい。それで実をつけるには雄雌2
株だけでなく、数本を植えて置けば確実に実をつける株ができると思う。
 
 栽培するにはこの植物が中部以北に分布しているから比較的涼しいところがよ
い。チョウセンゴミシはツルを伸ばして高さが2mほどにも大きくなるので、畑や
庭に植えて支柱を立ててツルを誘引するようにする。土質は選ばないが肥沃地の
方が生育は良いようだ。暖地でも栽培できないことはないが、自生地のように株
は繁茂しないし、実の付きかたも悪い。寒冷紗などで覆って涼しくなるように工
夫すれば栽培できないことはない。
 繁殖は実生、さし木、取り木などで容易に増やすことができる。簡単なのは長
く伸びた枝を土に付くようにしておけばそこから根を伸ばす。長く伸びた根の途
中からもたくさん新芽を伸ばすから、どちらもある程度成長したところで適当に
切り離せばいくらでも株を増やすことができる。
 
根の途中から新芽を伸ばした様子
  根の途中から新芽を伸ばした様子
チョウセンゴミシの鉢栽培
  チョウセンゴミシの鉢栽培
 
 鉢へ植えて栽培することもできるが8~10
号の大きな鉢に植えている。大きな株に仕立
てた方がたくさん実をつけるからである。
 培養土は庭土に堆肥か腐葉土を2割ほど混
合して用いたが、市販の園芸培養土でもよい。
 雄株と雌株とを買って植えたが実際にはその通りに花が咲かなかった。できれ
ば2,3株を植えた方が良いだろう。
 そして支柱を立てて行燈づくりにすると、赤い実が付いた鉢植えは観賞用にも
なる。
 肥料は春と秋ごろに発酵油粕と骨粉の肥料、あるいは緩効性化成肥料などを与
えるとよい。
 
 秋ごろ、赤く熟した果実を収穫し、乾燥して果実酒などにするときれいな琥珀
色に仕上がる。

(2016年3月1日)