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歳時記


「棚田の畔に真っ赤になって咲くヒガンバナ」
 
 お彼岸の頃になると、いつも決まってヒガンバナが咲き始めます。
ヒガンバナは繁殖力が強く、密に張った根が、田の畔や土手の補強や土止めになるといわれ、また、植物の
有毒性を利用してモグラや野ネズミを撃退したとも言われます。
鱗茎の澱粉は、良質の糊となり、この糊で貼った屏風や襖は虫に食われることはない。
十分な水でさらして有毒物質(リコリン)を除いた鱗茎は、かつて飢饉の際の貴重な食料とされてきました。
 
 ヒガンバナの別名は、非常に多く、
「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」、「死人花(しびとばな)」、「葉不見花不見(はみずはなみず)」など100
ほどあるようです。韓国では、花と葉が見えないがお互いを思いやっているという意味から「想思華」
(サンシチョ)といわれます。
これらからは、崇高さ、不吉さ、強さ、あたたかさなど。異なる様々な印象を受けます。
別名の多さは、突然に出現するヒガンバナの印象の深さを示しているようです。
 
 ヒガンバナの時期はこれからです。あちこちで赤と緑の美しいコントラストが見られることでしょう。
 
 鱗茎を掘り起こし外皮を除きすりおろし、酢又はヒマシ油を加えて関節痛や肩こりに湿布し、脚気、腎臓病等の浮腫
には両足の土踏まずに貼ります。いんきんたむし、ぜにたむしなどの皮膚病にも外用します。
 
 乾燥したものは、「石蒜」とよばれ、去痰、利尿、解毒、催吐の効果が知られていますが、なんといっても有毒植物で
あるため、扱いには注意が必要です。