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歳時記


クズの花

 8月のお盆を過ぎる頃から、道端や川の土手などで紫色のクズの花が咲き始
めます。クズは馬の好物であったことから、馬が主要な交通手段であった時代
には、道端のクズは馬によって食べられていました。しかし車社会になった現
在では、クズは馬に食されることがなく、他の植物にからみつきながら縦横無
尽に繁茂しているのを見かけます。
 
クズの花
 
 クズの花は「葛花(かっか)」といい、中国では二日酔いの嘔吐などに用いて
います。日本産も使用することはできますが、市場には出回りません。一方、
クズの根は葛根湯に配合される生薬の葛根として有名です。また根から取った
デンプンからは、葛きりや葛餅が作られます。
 
 クズに関しては、正岡子規が詠んだ次のような句があります。
「葛の葉の吹きしづまりて葛の花」
 この句からは、夏に葉を茂らせることだけに注がれていたエネルギーが、次
第に花を咲かせる方へと向けられていく様が伺えるとともに、夏から秋へと季
節の移ろいが感じられます。
 
 クズは花を咲かせた後は、地上部の栄養が地下部へと移動し、根にはデンプ
ンが多く貯えられます。
 
   

(掲載日:平成21年08月01日)