ホーム > 漢方・生薬について > 歳時記 > 歳時記(2010年) > ボタンとシャクヤク

歳時記


ボタンとシャクヤク

 「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」とは、美人を形容する言葉としてよく知られています。この中で、ボタンとシャクヤクは、ボタン科のボタン属に含まれる近縁種であり、対比されることがしばしばあります。中国では、ボタンの花は「花王」、シャクヤクの花は「花相」と称され、人々にとても好まれています。
 
 ボタンとシャクヤクは、ともに鮮やかで、大きな花をつけ、よく似ています。両者の違いは、前者は木本植物で、後者は草本植物であることで、その違いは春先の姿を見比べるとよくわかります。ボタンは、冬でも灰色をした幹が残り、春にその幹から赤い芽が吹き出してきます。一方、シャクヤクは、冬には地上部はすっかり枯れてなくなっていますが、春になると、赤い芽が地面からまっすぐ上に向かって勢いよく伸びてきます。
 
 薬としての利用については、薬用部位も、使用法も異なっています。ボタンは根から堅い木部を去った皮のみを「牡丹皮」とし、シャクヤクは根を「芍薬」として漢方処方に配合して用います。前者は、消炎、鎮痛作用のある駆瘀血剤として用いられ、後者は、筋肉とくに腹直筋の緊張を緩和し、下痢、腹痛、婦人科疾患などに応用されます。
 
 ボタンの花の時期である4月から5月にかけては、中国の各地でボタン祭りが開催され、特に、河南省洛陽のボタンは有名です。シャクヤクの花期はボタンより少し遅く、5月から6月にかけてです。これからしばらくの間、これら春の花が順々に咲き、私たちを楽しませてくれます。
 

(掲載日:平成22年04月01日)