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歳時記


ウサギと月

 2011年の新しい年を迎えることになりました。
 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
 
 今年の干支は卯(うさぎ)です。日本ではしばしば、月の表面の模様から、月にはウサギが住んでいて、餅をついているといわれます。この考え方はもともと中国から来ているようです。
 
 古代中国の代表的な詩集『楚辞』の中には「月には何の力があって、死んではまた生まれ変わるのか、何のよいことがあって、ウサギが月中に宿っているのだろうか(夜光何徳 死則又育 厥利維何 而顧莬在腹)」と書かれています。月の満ち欠けによって、あたかも月自体が生きているかのように考えるとともに、月にはウサギが住んでいるという考え方が表されています。
 
 『淮南子』には、羿(げい)という弓の名人がひそかに持っていた不死の薬を嫦娥(じょうが)という美人の妻が盗んで月の世界に逃げたとされています。その後、羿は死んでしまいますが、嫦娥は月美人となって月世界に住み、ウサギに不死の薬を搗かせているとのことです。
 
 これらを受けて、唐代の詩人である李白は「白い兎が月の中で仙薬を秋も春も搗いている、嫦娥が住んでいるが隣には誰かいるのだろうか。・・・(白兎擣薬秋復春、嫦娥孤棲與誰鄰。・・・)」と詠んでいます。不死の薬は、月の満ち欠けが永遠に繰り返されていることとも関連しているのかもしれません。
 
 このような話を思い出しながら、寒空の中、あたたかくして月を愛でてみるのはいかがでしょうか。
 
 本年が良い年となりますように、お祈り申し上げます。
 

(掲載日:平成23年01月01日)