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歳時記


カラスウリとキカラスウリ

 秋になると、山野の植物の葉は枯れ落ちて、その隙間からカラスウリやキカラスウリの実が顔を出します。両植物ともにウリ科のつる性の多年草で、カラスウリは長さ5〜7cmほどの赤く熟した楕円形の果実をつけます。一方、キカラスウリでは、長さ10cm程度のやや大きな黄色く熟した楕円形の果実をつけます。キカラスウリは、果柄が長く、種子が扁楕円形で一端がわずかにとがり帯状の隆起がない点で、カラスウリと区別することができます。
 
 カラスウリやキカラスウリは、日本列島各地の山野で、また垣根や公園樹に巻きひげでからみついて高いところまで伸びていくのが見られます。花は8月から9月にかけて咲き、白い花びらの縁は糸状に裂けて広がります。花びらはカラスウリの方がキカラスウリよりも長く、両種ともに夕方から夜間にかけて花を咲かせます。栽培も可能で、壁ぎわに支柱を立てたり、垣根を利用したりして、つるをからませるようにするとよく成長します。
 
 キカラスウリの根からは、白いキメの細かなデンプンが得られます。これは天瓜粉(天花粉)と呼ばれ、汗知らずとして、あせもの予防に使用されてきました。皮膚にふりかけて汗止めとして用いられた様は、「天瓜粉ところきらはず打たれけり」という俳句にも残っています。現在では、天瓜粉にかわって、鉱物のタルクを微細な粉末としたものが使用されることが多いようです。
 
 生薬として、日本ではキカラスウリの根を「栝楼根」と称して止瀉、解熱を目標に用い、また種子を「栝楼仁」と呼び、鎮咳、去痰薬としています。
 
 
 

(掲載日:平成24年10月01日)