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歳時記


ヤマイモ

 秋を代表する食材としてはイモ類をあげることができます。イモ類には、地上部の光合成で得られたでんぷんなどの栄養が豊富に蓄えられており、世界各地で食料とされ、主食とする地域もみられます。日本においては、現代ではイモ類といえば、ジャガイモやサツマイモが主流ですが、古くから食べられてきたのはサトイモやヤマイモで、特にヤマイモは、すでに縄文時代には食用にされていたとも考えられています。
 
 この「ヤマイモ」という名称は、日本において食用とされるヤマノイモ属(Dioscorea属)植物の総称です。主な植物にはヤマノイモとナガイモがあります。ヤマノイモは日本の山野に自生しており、その地下部である芋を「自然薯(じねんじょ)」などと呼びます。一方、ナガイモは中国原産の植物で、日本では畑で栽培されています。ナガイモにはいくつかの品種があり、細長い芋、掌状の芋、球状の芋などが根菜として流通しています。
 
 生薬の「山薬」は、ヤマノイモとナガイモの芋(植物学的には、担根体)の皮を除いて乾燥したものです。山薬は『神農本草経』の上品に「署豫」の名で収載され、「傷中を主る。虚羸を補い、寒熱や邪鬼を除き、中を補い、気力を益し、肌肉を長ずる。久しく服用すれば、耳、目を聡明にし、身を軽くし、飢えず、延年する」とされています。牛車腎気丸、八味地黄丸などの処方に配合されます。
 
 またヤマノイモやナガイモの地上部の茎にできる「むかご」は、「零余子」と称します。『本草綱目』には、「零余子はよく煮て皮を去り食すと山薬に勝る」と記されています。むかごを炊き込んだ「むかご飯」は、晩秋ならではのものです。これから訪れる冬を健やかに過ごすために、むかご飯を食して体力を養いたいものです。
 
 
 

(掲載日:平成24年11月01日)