ホーム > 漢方・生薬について > 歳時記 > 清明と穀雨を迎えて

歳時記


清明と穀雨を迎えて

 4月には二十四節気の清明と穀雨があります。今年は4月4日が清明、そして4月20日が穀雨にあたります。
 
 清明の頃になると、暖かい日が増し、草花は春の陽光を浴びて成長します。日本の各地では、桜が開花して、満開となり、お花見を楽しむ人々で賑わいます。4月上旬は、暖かい日が増えているとはいえ、まだ肌寒いこともあり、蚊や毛虫といった虫たちはまだ現れません。このような虫たちがいないことも、桜のお花見が盛んになった理由の一つでもあると言われています。この適度な気温が、桜のお花見に一役買っているようです。
 
 奈良県の吉野山は、桜の名所で、豊臣秀吉が花見をしたことでも有名です。また、吉野地方は、黄柏を配合した陀羅尼助や吉野葛でもよく知られています。吉野山の桜は、「一目千本」という言葉があるように、山全体に多くの桜があり、約3万本もの桜の木が植えられています。吉野山で見られる桜の木は、約80%がヤマザクラです。吉野山にある金峯山寺(きんぷせんじ)は、修験道の本山として7世紀に創建されたお寺であり、そのご本尊である金剛蔵王権現のご神木はヤマザクラです。そのため、吉野山には、山伏や参拝者たちによって、願いとともに、山全体にヤマザクラが植えられてきたといいます。
 
 ヤマザクラは、日本の代表的な野生種で、枝に若葉が生えてきた後に開花し、花は白いものやピンクがかったものなど様々な色があります。またその樹皮は、生薬「桜皮」として用いられ、第17改正日本薬局方にも収載されています。
 
 4月も下旬になり、穀雨の頃には、桜の花見も終わり、葉桜となります。穀物の成長をうながす雨が降り、木々の緑があふれる季節へと移っていきます。
 

(掲載日:平成29年4月12日)