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歳時記


ソテツの赤い実

 ソテツの赤い実の中身の種子は「蘇鉄実(ソテツジツ)」と称し、八重山諸島を中心として救荒植物の一つとして食糧難のときに利用されてきました。ソテツは熱帯から温暖な土地に分布し、ヤシ状の木本で、幹は柱状で、生長がきわめて遅い植物です。ソテツ目の中には1科ヤシ科のみが存在しており、日本にはソテツ1種が八重山諸島を中心として生育しています。
 
 ソテツの種子である蘇鉄実は、幹とともに豊富なデンプン質を含むため非常時に食用にされてきました。しかし、有毒配糖体であるcycasinを含むため、そのまま食することは危険です。水で何回も晒すなどの方法で、毒をしっかりと除去する必要があり、この過程を経てはじめて食料となります。
 
 また、ソテツの葉は民間薬として用いられます。くぎ等を間違って踏んでしまったときに、患部に黒焼きとしたものを外用することにより利用されます。
 
 また、大島紬は、奄美大島から主産する、伝統的な絣(かすり)織として、非常に高価なものとしても知られています。染色には、泥の中の鉄塩が利用され、茶色から黒色に染めることにより大島紬独特の色を生じます。ソテツの葉は多くの鉄分を含有するため、しばしば泥の中の鉄分の補給用として利用されるようです。
 
 一方、ソテツ自身の生育状況が悪くなった時に、鉄くぎ等を植物に差し込むと、生育状況が復活するとも言われています。このことから、蘇鉄(鉄によって蘇る)という名前があるとも言われています。真偽は明らかではありませんが、鉄に関して何らかの関係性があると考えられます。
 

(掲載日:2019年2月4日)