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歳時記


イカリソウ

 イカリソウの類はメギ科に属する植物で、北半球の温帯を中心に分布しています。薬用や観賞用として用いられるものが多く、イカリソウの名前の由来は、その花の形状が船の錨(いかり)の形状に似ていることから名づけられたものです。3月から4月頃に、フクジュソウやセリバオウレン、キクザキイチリンソウなどの早春の花が咲くのに続いて、イカリソウが花を咲かせます。イカリソウの花は、樹下の中で下向きに錨(いかり)のような形状をして花を咲かせるため、花自体はあまり目立ちません。
 
 イカリソウの地上部は生薬名「淫羊藿(いんようかく)」として流通します。この名前は、その昔、淫羊と呼ばれた1日に100回交尾する動物がおり、イカリソウの若い葉に由来する「藿」を食べていたことから、「淫羊藿」と名づけられたと陶弘景は本草書の中に記しています。このことから、この植物には古来、強壮作用が認められていたことが伺えます。
 
 第17改正日本薬局方には、インヨウカク(淫羊藿)として、本品は Epimedium pubescens Maximowicz、Epimedium brevicornu Maximowicz、Epimedium wushanense T.S.Ying、ホザキイカリソウ Epimedium sagittatum Maximowicz、キバナイカリソウ Epimedium koreanum Nakai、イカリソウ Epimedium grandiflorum Morren var. thunbergianum Nakai 又はトキワイカリソウ Epimedium sempervirens Nakai の地上部であると規定されており、原植物は多岐にわたっています。
 
 イカリソウの成分として、葉には、フラボノイドのイカリイン(icariin)が含有されることが知られています。古来、日本においても民間薬として、歯痛、陰萎、中風、健忘症などに用いられています。
 

(掲載日:2019年3月11日)