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歳時記


端午の節句はショウブ湯の日

 古来、端午の節句にショウブ湯に入ると、邪気を払い、また健康を保つことができるといわれています。このショウブ湯に使用する植物は、サトイモ科のショウブ Acorus calamus L. に由来します。
 
 ショウブは、日本からアジア東部において、池のふちや小川などの水辺近くに群生しており、葉の長さは50~90cmと細長く、また、横にのびる太い根茎を持つことが特徴です。根茎部分は、精油成分であるasaroneを含むことが知られ、生薬「菖蒲根」という名で、鎮痛、鎮静、健胃、駆虫薬として用いられます。また、葉にも同様の芳香性成分を含むことが知られているため、健康を保ち、強くたくましく成長することを望んで、浴湯料として用いられます。
 
 また、ショウブと同属植物にセキショウブ Acorus gramineus Sol. があります。この植物の根茎に由来する生薬は、「石菖蒲」の名称で、鎮痛、鎮静、健胃、駆虫薬として用いられています。本植物は、主として中国各地に分布し、精油成分であるasaroneに由来する特異な芳香を持ち、味は清涼で、やや辛く、わずかに麻痺性があります。
 
 一方、端午の節句近くの4月から5月にかけて、アヤメ科に由来するハナショウブやカキツバタなどが紫色のきれいな花をつけます。これらの植物も剣状の葉をつけるため、ショウブ湯に使う葉をこれらアヤメ科の植物と勘違いすることがあります。ショウブ湯に使用するのは、サトイモ科のショウブであり、きれいな花が咲くアヤメ科植物ではないので、気を付ける必要があります。サトイモ科のショウブの花は、地味で全く異なるため、花が咲く時期であれば容易に区別が可能です。
 

(掲載日:2019年5月7日)