日本薬局方(日局、第19改正)に「ダイオウ(大黄):RHEI RHIZOMA」と収載され、基原はRheum palmatum Linné、Rheum tanguticum Maximowicz、Rheum officinale Baillon、Rheum coreanum Nakai又はそれらの種間雑種(タデ科Polygonaceae)の、通例、根茎と記載されて、漢方では瀉下薬として広範囲にわたって用いられる生薬です。本品は定量するとき、換算した生薬の乾燥物に対し、センノシドA 0.25%以上を含むと規定され、性状は卵形、長卵形又は円柱形を呈し、しばしば横切又は縦割され、特異なにおいがあり、味は僅かに渋くて苦く、かめば細かい砂をかむような感じがあり、唾液を黄色に染めるが、味の渋いものが良品とされます。同じく、大黄を粉末にした「ダイオウ末」も収載されていますが、本品もセンノシドA 0.25%以上を含むものと規定されています。

 『神農本草経』の下品に記載され、薬効に関する記述に「瘀血、血閉の寒熱を下すを主る、云々」とあり、駆瘀血、利尿、瀉下作用が推定され、胃腸の機能を良くし、内臓の働きを調和して新陳代謝を促進することが考えられます。『本草拾遺』『図経本草』からは大黄は「錦紋があり牛舌形で質は緊密で重質なものを佳とする」とされており、また正倉院薬物の「種々薬帳」に記載があって現存している大黄も錦紋大黄であることが確認されています。

 局方中で種間雑種を基原植物として明確に規定している理由は、Rheum属植物はお互いに交配して種間雑種をつくり易く、現在市場に出回っている生薬の基原植物の特定が困難であるからです。

 中国、日本に限らず、錦紋大黄を良品としていたことが本草書から窺えますが、現在、日本の市場に流通する大黄は、中国四川省で産出される野生品の軽質な雅黄系大黄(雅黄:がおう)と青海省で産出されて西寧(せいねい)を集散地とする重質な錦紋系大黄(西寧大黄)が主ですが、そのほかに朝鮮大黄、信州大黄の2種があります。現在、北海道で栽培されている信州大黄は、武田薬品研究所が数十年の年月を費やし、栽培適地、育種、育苗などを検討した結果、ようやく生産品としての栽培が確立されたもので、朝鮮大黄(R. coreanum)を母種として、掌葉大黄(R. palmatum)との交配や、戻し交配などを繰り返して発見された種間雑種の1系統であるといわれます。センノシド含量が高く、瀉下作用に優れ、品質が安定しています。

 成分としてはアントラキノン類のクリソファノール、エモジン、レイン、ジアントロン類のセンノシドA~F、タンニン、ラタンニン、スチルベン誘導体、リンドレインなどを含みます。センノシドは腸内細菌によってレイン・アンスロンという活性成分に変換されて大腸で瀉下効果を発揮し、またアントラキノン類の抗菌・抗炎症作用、リンドレインの抗炎症作用、ラタンニンの血中尿素窒素(BUN)低下作用などが明らかにされています。

 性味は苦・寒、帰経は脾・胃・大腸・肝で、通便・清熱瀉火・活血化瘀作用があるので、腸中の食積滞および便秘を治し、胃腸の炎症を鎮め、血熱(瘀血で炎症が強いものおよび温病で熱が血分に入ったもので通常血便・吐血などの出血を伴う状態)を鎮めて瘀血を除くため、熱性疾患、興奮症状、瘀血、腹部腫瘤、無月経などに用いられます。大黄にはその薬効が激しいため「将軍」という別名もあり、酒と混ぜて加熱後に乾燥した「酒軍」として用いると瀉下作用は弱まり、抗炎症・駆瘀血作用が強くなります。ただ、大黄には子宮収縮作用があるため妊娠中や授乳中の服用は控えることが喚起されています。

 配合応用としては、主に急性の便秘に用いられる場合の大黄+芒硝・枳実・厚朴は熱性疾患に伴う便秘や口渇、腹満、うわ言、舌苔黄などのみられる便秘を治す「大承気湯」、大黄+甘草は大黄の激しい作用が緩和される「大黄甘草湯・調胃承気湯」、大黄+麻子仁・杏仁は慢性化した便秘を治す「麻子仁丸・潤腸湯」、大黄+附子・乾姜は冷えの強い便秘を治す「大黄附子湯・附子瀉心湯」、大黄+芍薬・甘草は腹部膨満し腸内の停滞感や腹痛を伴う常習便秘や急性腸炎を治す「桂枝加芍薬大黄湯」、炎症症状や上部の熱証に用いられる場合の大黄+柴胡・茵蔯蒿は肝炎や胆嚢炎などの胸脇苦満や黄疸を伴う炎症を治す「大柴胡湯・茵蔯蒿湯」、大黄+牡丹皮・冬瓜子は虫垂炎などで右下腹部に痛みがあるときの「大黄牡丹皮湯」、大黄+黄連・芍薬は急性細菌性下痢を治す「芍薬湯」、大黄+黄連・黄芩はのぼせや鼻血、興奮などの熱症状を治す「三黄瀉心湯」、打撲や月経異常などの瘀血による症状に用いられる場合の大黄+川芎・樸樕は打撲、捻挫による疼痛や腫脹を治す「治打撲一方」、大黄+桃仁・桂皮は月経困難症と月経時や産後の精神症状を治す「桃核承気湯」など、瀉下・清熱・活血を目標とした漢方処方に配合されています。

 大黄は瀉下薬として頻用される生薬ですが、漢方処方においては瀉下作用以外に駆瘀血・鎮痛・抗菌・抗炎症・向精神・利胆および腎機能改善などの薬能もあることが知られています。

大黄