タカサゴユリ ユリ科
 
 車で高速道路を走っていたら、道路の法面に白い花が咲き乱れている光景が目
に入ってきた。ずっと近づいてよく見ると、花はラッパ状の形をしていること
や、花弁の外側に薄い茶色を帯びた部分
タカサゴユリの花
  タカサゴユリの花
が見られるから、タカサゴユリの花であ
ることが分かった。
 高速道の上下線で、しかもかなり長い
区間に亘って咲いているところを見ると、
相当数のタカサゴユリの花が咲いている
ことになる。
 
 タカサゴユリは台湾原産のユリである。
わが国には戦前に観賞用として導入され、
 切り花として栽培されていたものが逸
出して、今では郊外へ出るとあちこちで見られるようになった。
 その理由は、実生による繁殖が容易なことである。ほとんどのユリは種を蒔
いてから花が咲くまでに2,3年を要するが、このユリは種を蒔いてから7,8
か月で花を見ることができる。その上、肥沃な土地でなくてもよく成長するこ
とである。
 
 普通に栽培したユ
カサゴユリの鉢植え(左)
カサゴユリの鉢植え(左)
1年生の鱗茎の様子(右)
1年生の鱗茎の様子(右)
リでこれからの時期
に花をつけるユリは
ないが、タカサゴユ
リは10月頃まで花
を見ることができる。
 そして、開花した
花茎の基部から、ま
た新しい花茎を出し
て花をつけるもこの
ユリの特徴である。
 繁殖力が旺盛なこのユリを、鉢植えでも、地植えでもよいから1株作ってお
くと、毎年、今頃になれば鉄砲百合に似たきれいな花を見ることができる。
 
 ところが、この花は園芸市場でほとんど見ることがない。したがって、この
種苗を手に入れるには、咲いているものを移植するか、種子が熟したころ、即
ち、花後40〜50日を過ぎたころに再び訪れて完熟した種子を手に入れるほ
かない。
 
 種子が手に入ったら5号程度の大きさの浅鉢に園芸培養土か赤玉土の小粒に
腐葉土を2割ほど加えた土を入れて、その上に重ならないように種子を蒔いて、
隠れる程度に覆土をする。
 乾きすぎないように、湿りすぎないように管理すると2週間ほどで芽を出す。
発芽してからは薄い液肥を時々与えると成長がよい。
 葉が2,3枚出れば移植して株間を広げる。葉が5,6枚になれば5〜6号鉢
へ1株植とする。花が咲いている株を手に入れた場合でも同様に植えればよい。
 タカサゴユリの1年生は鱗茎が小さくても、写真のようにその周りからたく
さんの根を出して養分を吸収しているから、必ず花が咲いてくれるのである。
 
 小さな鉢へ植えて栽培すると草姿は小さいが、地植えにして肥料を与えると
人の背丈よりも大きく、2メートル程にもなり、多数の花を咲かせることができ
る。こうしていろいろな栽培を試してみるのもおもしろい、楽しいユリである。
 
 ユリの鱗茎はユリ根としてよく茶碗蒸しなどに利用されている。ほとんどの
ユリの鱗茎は食用になると聞いて食べてみたら、このユリは苦くて食べられな
かった。
 

(2011年9月1日)