ミツマタは早春に葉に先立って黄色あるいは赤橙色をした房状の花を咲かせます。花は多数の小花から構成されており、花弁はなく、4枚のがく片が開いて花弁のように見えています。枝が三つに分かれていることからミツマタの名前が付けられています。

ミツマタは日本では和紙の原料植物として栽培されてきました。樹皮を煮たり、叩いたりして得られた繊維が紙漉きに利用されます。ミツマタの他、コウゾやガンピの樹皮繊維からも和紙が作られます。トロロアオイの根から得られる粘液も紙漉きにおいて重要な役目を果たしています。

ミツマタ

紙は中国医学の発展には必要不可欠なものでした。古代中国において、医方書や薬物書は、竹簡や木簡などに文字が書かれていたのが始まりとされています。竹簡や木簡の場合、一つ一つ同じものを複製するのにはかなりの時間と労力が必要でした。

中国において紙が作られるようになり、さらに宋代に入ると印刷技術が発明され、書物の複製が格段に容易になりました。北宋の皇帝たちは医療に対する思いが特に強く、『素問』、『傷寒論』、『金匱要略』、『外台秘要』、『千金要方』など多くの古医書について綿密に校勘を加えて刊行しています。また、『開宝本草』は本草書としては最初の刊本です。紙に印刷されたこれらの書物は中国内外に広まり、そして現代に生きる私たちにもその内容を伝えています。