新緑が美しい季節になりました。この時期、山林では、緑の木々の中に、ひときわ大きな白い花をつけるホオノキが目に付きます。花から漂う甘くて濃厚な香りも、ホオノキがどこにあるかを、私たちに知らせてくれます。
ホオノキは葉も大きく、1枚の大きさが、長さ40cm、幅25cm以上にもなり、枝先に数枚が集まって、傘のように広がってつきます。青葉は「朴葉寿司」や「朴葉巻き」に利用され、また乾燥した葉の上に味噌と野菜などを混ぜたものをのせて焼いて食べる「朴葉味噌」は、飛騨地方の郷土食として有名です。
樹皮を乾燥させたものが生薬の「厚朴」で、半夏厚朴湯、小承気湯、平胃散、麻子仁丸など多くの処方に配合されています。樹皮の採取は夏の土用の頃に行われます。この時期は樹皮と材の境にある形成層の活動が盛んなことから、簡単に樹皮を剥ぐことができます。またホオノキの材は、柔らかくて加工がしやすいことから、朴歯の下駄、楽器、刀の鞘、版木など幅広い用途があります。
このようにホオノキは、大きな花や葉が目を楽しませるだけでなく、葉、樹皮、材などあらゆる部位が私たちの生活に関わりが深い、日本の初夏を代表する樹木です。