「柿が赤くなるころには医者が青くなる」というのは昔から伝えられている言葉です。秋には、これまでに暑い夏を過ごしてきたことで体力が低下しており、また寒い冬むかえる前に気力や体力を充実させる必要があります。このような時期に成熟する柿の実は、栄養が豊富で、医者に勝るとも劣らない貴重なものとされてきたのです。

柿の栽培の歴史は古く、中国では約2500年前に書かれた『礼記』に記載があります。日本における栽培も古く、『本草和名』には「加岐」の名称が載せられています。柿は、現在では多くの品種がつくられており、市場には完全な甘柿あるいは渋柿の品種が主に流通し、日本の秋の代表的な果物となっています。

柿

柿の渋みはタンニンに由来するものです。このタンニンが人間の舌のたんぱく質と結合するときに、舌が脱水されて渋みを感じます。渋みを感じなくさせて美味しく食べるために、渋柿をアルコールで処理したり、干し柿にして乾燥させたりすることにより脱渋を行います。これらの過程で、タンニンが不溶化するため、人間が渋みを感じなくなると考えられています。

古代から珍重されている柿の木は、現在でも民家の庭先などに植えられているのを見かけます。色づいた柿の実が、夕日に照らされる様子は、秋の美しい風景のひとつです。