「木(きへん)」に「春」と書いて椿。ツバキは、ツバキ科の常緑高木で、花木として、しばしば庭や公園などに植えられています。春になると白、桃、赤など色とりどりの花を咲かせ、また花の形も一重咲き、八重咲きなど様々であり、愛好家が多い植物です。ツバキを繁殖させるには、挿木や接木、取木の他に、実生を用いた方法があり、長い年月にわたり人為的な交雑が繰り返されてきたため、現在では数多くの品種が存在しています。

ツバキの種子を圧搾すると薄い黄色を帯びたツバキ油が取れます。ツバキ油は伊豆諸島や九州南部で生産され、昔から日本で頭髪につける油や、食用油とされており、また日本薬局方にも収載されています。

ツバキの葉を焼いて作った灰は、染色の際の媒染剤として用いられます。ツバキの灰には、アルミニウムイオンが多く含まれており、水溶液はアルカリ性になります。この条件下で、ムラサキの根である紫根を用いて染色すると、鮮やかで美しい紫色に染まることが知られています。

毎年3月には、奈良の東大寺二月堂で修二会(しゅにえ)(通称:お水取り)が行なわれ、その期間、二月堂の本尊である十一面観世音菩薩には、ツバキの造花がお供えされます。このツバキは紅花で染めた赤い和紙と、梔子で染めた黄色い和紙で作られています。「椿」は、日本の春を代表する伝統行事にも、彩りをそえています。