「夏越の祓(なごしのはらえ)」は、6月30日に各地の神社で行なわれる伝統行事で、「茅の輪(ちのわ)くぐり」で知られています。境内に設置された大きな茅の輪をくぐることにより、正月からの半年間の穢れを祓い、病や災いに遭わないように祈るというものです。この茅の輪はチガヤなどの植物を束ねて作られています。

チガヤは、道端など日当たりのよい場所にみられるイネ科の植物です。春から初夏に、茎の先から円柱形の花穂を出し、その穂は成熟すると全体が白い毛におおわれているように見えます。地下には、横に這って長く伸びる根茎があり、大きな群落を作ることもあります。

チガヤ

その根茎は生薬「茅根」として利用され、中国では一般的に「白茅根」と称します。利尿、解熱、止血薬として、熱性の病、吐血、鼻血、血尿、水腫、小便不利、煩渇などに応用します。また、チガヤの花穂を「白茅花」と称し、鼻や歯ぐきからの出血などに用います。日本の民間療法では、利尿、止血、風邪、咳などに、チガヤの根茎や、花穂を煎じて飲んだりします。

中国では、茅根をお茶として飲用することもあります。「茅根緑茶」は、新鮮な茅根6に対し、緑茶1を配合し、それに湯を注いでしばらく置いてお茶の代わりに飲みます。これは、清熱、利尿、涼血、止血の作用があるとされ、暑い時期に適した飲み物です。このようにチガヤは、夏の生活にとても関わりが深い植物といえます。