秋は実りの季節です。果物はこの時期に旬を迎えるものが多く、イチジクもその一つです。イチジクには2年目の枝にできる夏果と、今年の枝にできる秋果があり、8月から10月にかけて秋果が出回ります。

イチジクは、他の果物と比較して果汁が少ないからなのか、子どもたちの人気はいまひとつで、地味な印象があります。しかし、最も古くから栽培されてきた果物と考えられており、古代の人々には愛されていたようです。古代エジプトの壁画に描かれ、ギリシャ神話や聖書にも登場します。日本には江戸時代に伝わりました。栽培がしやすいことから、庭にイチジクの木が植えられているお宅もよくみられます。

ところで、イチジクの実や木は知っていても、花を思い浮かべることは難しいのではないでしょうか。イチジクの木を観察すると、春に葉腋に蕾のようなものがつきますが、それは花を咲かせることなく、やがて大きく膨らみ、実となるように見えます。しかし、実際には、実の内側に多数の小さな花が咲いています。イチジクとして食べている部分は、この無数の花と、花を包みこんでいる白く肉厚になった花托なのです。イチジクを「無花果」と書くのは、花を咲かせることなく実ができるように見えることに由来しています。

日本の民間療法では、イチジクは痔に効果があるとされ、実を食べたり、あるいは乾した実や葉を煎服したり、葉の煎じ液を入れたお湯につかるとよいと言われます。また、新鮮な葉や実の断面からは白い乳液が出ますが、これを痔やイボに塗ると効果があるとされています。乳液は、フィシンというタンパク質分解酵素を含んでおり、手や口につくとかぶれることがありますので、注意が必要です。