2012年は辰年です。十二支それぞれに動物があてはめられている中で、辰年の龍だけが想像上の動物です。

龍は、古来中国では神聖な動物とされ、その出現は吉兆であり、また皇帝のシンボルとして用いられてきました。龍の姿は、複数の動物を組み合わせたイメージであり、『本草綱目』中で『爾雅翼』を引用して「その形は九種の動物に似る。頭は駝(らくだ)に似て、角は鹿に似て、眼は鬼に似て、耳は牛に似て、項(うなじ)は蛇に似て、腹は蜃(みずち)に似て、鱗は鯉に似て、爪は鷹に似て、掌は虎に似る。背には八十一の鱗があり、九九の陽数をそなえる」と記されています。

「龍」に関連する生薬には「龍骨」があります。中国の本草書によると、その基源については、斃れた龍の骨であるとする説や、蛇の脱皮のように龍が脱骨したものであるとする説などが論議されており、本当に「龍」に由来すると考えられていたようです。現代では龍骨は、大型ほ乳動物の化石化した骨などに由来することが明らかにされており、柴胡加龍骨牡蛎湯などに配合されます。舐めてみた時に舌に吸い付くものが良品とされます。

他に「龍」という字が付く生薬には「龍胆」「龍眼肉」「龍涎香」などがあり、「龍」の後に「胆」「眼」「涎」など体に由来する漢字が付されています。実際には植物や動物に由来するものですが、それに想像上の神聖な動物である龍の体の一部であるかのような名称をつけることは、薬としての効果をより高める作用があるように思われます。

「辰」という字は、万物の形が整って活力が旺盛になって、元気よく伸びることを指すと言います。今年が、この字の意味のように、充実して健やかな一年になることを心から願います。

本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。