北陸地方のいくつかのお寺で行われる「一つ灸(ひとつやいと)」という行事をご存知でしょうか。毎年6月1日と7月1日に、富山県氷見市の東泉寺や高岡市の瑞龍寺、金沢市の高源院などで行われており、参拝に訪れた人々は、病気平癒、息災延命を願い、足の三里の付近にお灸をすえてもらいます。

もともとは中風除けの秘灸として用いられていましたが、近年では、春の農作業に一息つくころに、身体を休めるために行われてきたとも言われています。三年間で三回お灸を行うことにより、一生の病難を救うとされ、男性は左足に、女性は右足にお灸をします。

高岡市の瑞龍寺では、青麻三光大菩薩(あおそさんこうだいぼさつ)にお参りをしてお灸をすえてもらいます。お寺による説明では、この菩薩は、薬草で人々の病気を治したとされる中国古代伝説の菩薩であり、三光は、伏義、神農、黄帝があてられています。施灸の間、「オンシィシィカタヤソワカ」という真言が僧侶によって唱えられ、お灸を施された人々は熱さと痛みをこらえて我慢しながらも、手を合わせます。また、一つ灸に用いられるもぐさと、棒灸と呼ばれる棒状に固めたもぐさが販売されています。これらは僧侶により一つ一つご祈祷が施されているとのことで、自宅で使用できるようになっています。

瑞龍寺で行われる一つ灸は、お寺が国宝であることもあり、県内外からのツアーバスが出るほど、現在でも賑わいをみせています。また、東泉寺では、近隣の人々を中心に一つ灸の行事が続けられており、家庭的なくつろいだ雰囲気の中でお灸を受けることができ、毎年欠かさずに通う人もいるそうです。