今年も雪の季節が巡ってきました。雪が最もよく似合う植物としては、マツをあげることができます。針のように尖って青々とした葉の上に、綿帽子のような白い雪が降り積もった様子はとても美しいものです。その様はしばしば俳句や和歌に詠まれ、また画題にもなり、日本画では江戸時代の円山応挙の代表作である国宝『雪松図屏風』が有名です。

雪つりを施されたマツも冬ならではの風物詩です。雪の重みで枝が折れないように、幹の近くに立てた柱から多数の縄を放射状に垂らして各枝を吊って支えます。金沢市の兼六園の雪つりは壮観で、多くの観光客がその景色を見るために訪れるほどです。日本の庭や公園などに植えられているマツは、アカマツやクロマツが主です。マツには、尖った葉が2本である「二葉松」と5本の「五葉松」があり、アカマツやクロマツは二葉松です。

五葉松であるチョウセンゴヨウの松かさは、長さ約15cmと大型です。種子も大きく、「海松子」という生薬になります。一方、アカマツやクロマツの種子は小さいために用いることができません。『開宝本草』に「骨節風、頭眩をつかさどる。死肌を去り、白髪を変じ、水気を散じ、五臓を潤し、飢えさせない」と記されています。「海松子」は一般的には「松の実」として知られ、食用とされることが多く、韓国では料理やお菓子によく用います。

その他、マツの葉、樹脂なども薬用とされます。またマツに関係がある有名な生薬には、茯苓があります。茯苓はマツホドというキノコの菌核で、マツの根に菌糸が付着して生長し、土中に埋もれて存在します。日本においてもアカマツやクロマツの林で採取することができます。

マツは、寒い冬でも青々とした葉を茂らせることから長寿の象徴として尊ばれます。またそれだけでなく、人々の健康を保つための生薬を提供してくれる有益な樹木でもあるのです。