日本気象協会は今年4月に「季節のことば36選」を発表し、6月の言葉には「梅雨」、「蛍舞う」とともに「あじさい」が選ばれました。アジサイは、暗くなりがちな梅雨の季節に彩りを添える植物として、日本人の心に深く浸透しているようです。

日本人ばかりではなく、江戸時代に医学を日本に伝えたシーボルトも、アジサイに魅了された一人です。彼は植物にも造詣が深く、日本で見たアジサイに、妻の愛称「お滝さん」に因むと考えられるHydrangea otakusa という学名を提唱した話はよく知られています。日本には、アジサイの仲間のアジサイ属植物Hydrangeaとして、ガクアジサイ、ヤマアジサイなど多種が自生しており、アジサイは、ガクアジサイから作られた品種とされています。アジサイの仲間からは、他にも多くの品種が作られており、世界中で人気の園芸植物となっています。

このアジサイ属植物は、最近、植物分類学の分野で注目されています。植物の分類には、従来、花などの形態の類似性を重視してきましたが、近年、遺伝子解析の結果を分類に反映させることが行なわれています。アジサイ属植物は、従来の分類体系では、ユキノシタ科に含められたりしていましたが、遺伝子解析に基づく新しい分類体系では、ユキノシタの仲間とは縁が遠く、ミズキ科の植物に近いとされています。

また、アジサイに含まれる化学成分についても注目されています。近年、アジサイが原因とされる食中毒事件が発生しています。料理の飾りとして添えられていたアジサイの葉を食べた人が、嘔吐、めまいなどの症状を訴えたのです。中毒の原因物質は青酸であるという説やフェブリフジンというアルカロイドであるという説などがありますが、解決はされていません。

アジサイの仲間は、観賞用として人気が高いうえに、植物学や化学など学問の世界においても話題が多い植物です。