6月から7月にかけて、庭先や花壇などにクチナシの花が咲いているのを見かけます。クチナシGardenia jasminoidesの花には、学名にもあるようにジャスミンのような濃厚な芳香があり、実際には、視覚よりも先に嗅覚でクチナシの存在に気づかされることが多いようです。

クチナシの花は純白で美しく,果実は楕円形で熟すと赤黄色になります。果実は熟しても裂開することがなく、このことから、「くちなし(口無し)」と呼ばれるようになったという説が有力です。果実を煎じた汁は,古来、黄色染料としてクチナシ染めなどに用いられてきました。また,きんとんや沢庵漬の他、お祝いや節句のご飯やお餅を染めるのにも用いられます。

クチナシの果実の色や形には多くの変異があります。一般的に丸手の物を「山梔子」と称し、長手のものを「水梔子」と称します。「山梔子」が主に薬用にされ、消炎、止血、解熱、鎮痛薬に用いられてきました。黄連、黄芩、黄柏と共に配合された黄連解毒湯は、のぼせぎみで顔色が赤く、いらいらして落ち着かない傾向がある場合の、鼻出血、不眠症、二日酔、口内炎などに応用されます。

クチナシは囲碁にも深い関わりがあります。碁盤の脚はクチナシの果実をかたどった形をしています。囲碁の対局者以外の見物人は口を出してはいけないというところからきていると言われています。外から見ていると案外、対局者ではわからない良い手が見えてくるものです。何事においても、当事者でない第三者には物事の事情がはっきりと見えることがあるようですが、囲碁の対局においては口出しをしてはいけないことになっています。