トチノキ科のトチノキは秋になると厚い皮に包まれた丸く大きな果実を実らせます。その果実が割れると中からクリに似た種子が現れます。この種子が一般的に「栃の実」と呼ばれます。種子は、多量のデンプン質を含むため、栃餅や粉として食用に供されます。特に山深く、穀物食の乏しい地域では、冬期間の食料として、秋になると種子を拾って蓄えます。種子には他に、サポニンやタンニンが含まれるため、そのままでは苦く食することができません。

この種子を食用にするためには、数多くの処理を経る必要があります。この処理は、生薬でいえば修治にあたります。種子を拾った後には先ず最初に、水に一晩つけておきます。種子の中に虫がいる場合はこの処理により、虫は自然に種子の外にはい出てきます。その後、流水に浸したり、木灰汁(モクアク)で煮たり、乾燥するなど、全部で約30の工程を経て、はじめて食することができます。

薬用としては、日本において種子、樹皮、葉が民間薬として利用されてきました。種子は粉末として、しもやけなどに外用し、胃痛、痔などに内服するとされ、樹皮の煎じ液は、打撲、水虫などに外用するとされます。葉は揉んでその汁を外用すると虫刺されなどに有効であるとされます。また、イギリスではセイヨウトチノキの葉を帽子にさしてユスリカなどの虫よけに使用したりするようです。

トチノキは、大きいものでは、高さは30m近く、太さは1m以上にもなる樹木で、葉は、5〜7枚の小葉が手のひらのように広がり、非常に大きくなります。日本に自生するウコギ科のトチバニンジンの葉は、このトチノキの葉に形態が似ていることから、その名前がつけられています。トチノキは、たった1つの種子から巨大な樹木へと成長します。種子である「栃の実」が持つ生命力の強さを感じます。