寒い時期の定番料理である、鍋物やおでんにはダイコンが欠かせません。ダイコンについては、李時珍が『本草綱目』の中で「根,葉いずれも,生でもよく,煮てもよく,漬け物にするのもよい。野菜の中で最も利益があるものだ」と記しています。

ダイコンは身近な食材であるためか、日本では多くの民間療法にも利用されています。大根おろしを、風邪,消化不良の時に食べたり、肩こり,打撲,しもやけなどに貼ったり、咳に、薄く切った根を水飴に漬けた汁を飲んだりする方法が知られています。また,ダイコンの葉を乾したものを干葉(ひば)といい、これを入れた干葉湯に浸かると体がよく温まり,冷え症などによいとされています。

生薬としては種子が「萊菔子(らいふくし)」と称して用いられます。中国の『中華人民共和国薬典』に収載されており,消化不良,腹痛,下痢,咳嗽,痰が多いときなどに用いるとされます。

ダイコンは、「萊菔」以外に「蘆菔(ろふく)」ともいい、中国の本草書では『名医別録』に「蕪菁及蘆菔」として初めて収載されました。「蕪菁(ぶせい)」とはすなわちカブであり、『名医別録』でカブとダイコンを同じ條文に一緒に記載したことから、その後の本草家たちの間では様々な見解が生じ、混乱がみられました。カブとダイコンは共にアブラナ科に属しますが、よく見れば全く違う植物であり、前者はアブラナ属でハクサイなどの仲間で、後者はダイコン属の植物です。

カブもダイコンと同様、晩秋に旬を迎えます。カブといえば、漬物や味噌汁などが定番の食べ方ですが、一層美味しくなるこの時期に、いろいろな料理に取り入れたいものです。