青葉の緑が鮮やかに映る季節になりました。「緑」という漢字を調べてみると、つくりの部分「彔」は若い竹から皮を剥ぎ取り緑の茎を現すことを示し、それに糸偏をつけた「緑」という字は、若竹の色に染められた糸の色を表しているとあります。

タケは、庭園や竹林に植えられたり、また春のごちそうとしてタケノコを楽しんだりと、現代においても比較的身近な植物です。タケは、一年中、緑を保っているようにみえる植物ですが、実はタケノコが生長した後、春から初夏にかけて葉が黄変し、「竹の秋」と呼ばれる葉の生え変わる時期を迎えます。そして、他の樹木が紅葉をはじめる秋は、「竹の春」と呼ばれ、若いタケは生長して新しい葉を青々と茂らせます。一方、タケというとササとの違いが必ず話題になりますが、タケノコの皮が、タケでは生長後に自然に落下しますが、ササでは残ったままで茎を包む点で区別することができます。

タケは正月の門松、七夕飾りなど、日本の伝統的な行事に欠かせません。また日本では、身の回りで使われる日用品は、かつてはタケを材料としたものが多くみられました。しかし、近年はプラスチック製品があふれています。日本人がタケを利用してきたという文化を後世に伝えていくためにも、竹製品を見直し、少しでも使い続けていきたいものです。

タケ類に由来する生薬は、竹葉、竹筎、竹瀝、竹黄、竹巻心、竹衣、竹花など多岐に渡ります。『神農本草経』には、竹葉の名で収載され、『名医別録』には菫竹葉、淡竹葉、苦竹葉の3種類が収載されています。なお、『日本薬局方外生薬規格2012』には、「チクジョ(竹筎)」が収載され、その基源は、ハチク、マダケなどの稈(茎)の内層と規定されています。竹筎は、温胆湯などに配合されて用います。