ベニバナには「半夏ひとつ咲き」という言葉があります。半夏生の頃に広い畑の中で、まず一輪が咲き、それをきっかけに次々に花が開きはじめるといいます。花の色は、はじめは鮮やかな黄色であったものが、次第に赤みを増していきます。江戸時代に紅花の一大産地として栄えた山形県では、今でもベニバナの畑があり、花の時期には、摘み取りや紅花染めを体験するイベントが行われています。

遠くまでベニバナを見に行くことは大変ですので、プランターで栽培して、身近で花を楽しむこともできます。美しい花を咲かせるには、春の早い時期に種子をまき、5月頃に間引きをして、株を丈夫に育てることが重要です。間引いた苗は野菜として、ゆでてお浸しにするとおいしく食べることができます。種まきの時期が遅くなると、茎が細く短いままで小さな花が咲いてしまうことがあります。

山形では花を摘む作業は早朝に行われます。ベニバナには棘があるため、早朝の朝露に濡れて棘が柔らかいうちに花を摘み取ります。摘み取った花で染色をするには、多くの工程を経なければなりません。ベニバナの花には、水溶性の黄色色素であるsafflor yellow と水に不溶の紅色色素 carthamin が含まれています。はじめに、花を水の中でもみ、黄色色素を流し出し、次に、その花に藁灰汁を加えて、紅色色素を溶かし出します。さらに、溶液に米酢などを加えると、紅色色素が析出、沈殿して染色することができます。

生薬としては、日本では「コウカ(紅花)」という名称で『日本薬局方』に収載されています。中国の本草書には、『開宝本草』に「紅藍花」として載せられたのが始まりです。『金匱要略』には、紅花を酒で煎じる「紅藍花酒方」という処方が載せられており、「婦人六十二種の風、及び腹中血気刺痛をつかさどる」と記され、紅花が婦人にとって重要な生薬であることがわかります。