ハスの花は7月下旬から8月上旬にかけて見ごろを迎えます。水面から伸びた茎の先に咲く花は、大きくて、ピンクや白色の花びらがとても美しいものです。さらに花を覗き込むと、中央部にある花托やその周りの雄しべは黄金色に輝いているようで、見る者を清らかな気持ちにさせてくれます。

花を観賞するのは、朝早くがおすすめです。早朝に花を開き、その日の昼ごろまでには一旦閉じてしまいます。開花から2日目の花が、色、香りともに最もよく美しいといわれます。花は3日目頃から完全に閉じることはなくなり、花びらが散り始め、最後には花托と雄しべだけが残ります。

花托はその後成長して大きくなり、色も茶褐色へと変わり、果托となります。果托には、20個ほどの穴の中に「ハスの実」ができます。その様子があたかも蜂の子が巣に入っているようなので「ハチス」と言われ、それから「ハス」という名前がついたとされます。ハスの実は緑色の時は、皮がやわらかく、生で食べることもできますが、成熟すると黒く、石のように堅くなります。

成熟したハスの実は、生薬「石蓮子」として用いられ、また、その黒い殻を去り、中の緑色の胚の部分を去ったものが生薬「蓮肉」となります。その他にも、胚、花、雄しべ、果托、葉、根茎(蓮根)などが薬用となり、ハスは多くの部位を利用する植物の代表です。ハスの美しく神秘的な花を見ていると、古の人々が、植物のあらゆる部位について薬になるのではないかと試みた気持ちがよくわかるような気がします。