秋はキノコの季節です。各地でキノコ狩りが行われたり、マツタケなど天然キノコの収穫時期を迎えたりします。ところで、生薬にもキノコに由来するものがいくつかあり、その中で最もよく使われるのは、茯苓(ぶくりょう)です。

茯苓は、マツホドというキノコの菌核に由来する生薬です。マツホドの菌核は、アカマツやクロマツの生きた樹木の根や切り株の根に付着したり、その付近に単独で存在したりします。多くは、地中の深さ10〜20cmのところに存在しており、大きなものでは直径30cmほどにもなります。外表面は、暗褐色で、内部はほぼ白色で薄い褐色を帯びるものもあります。

マツホドの菌核は地上からは全く見えないので、「茯苓突き」という長さ90cmほどの鉄製の針で地面を刺し、探し出します。針を突いたときの手応えと、抜いた針に白色の粉質物が付着していることで確認し、地面から掘り出します。プロの採集人でも一日突いても取れないこともあり、素人では見つけることはなおさら難しいのですが、突き当てたときは宝物を探し当てたような喜びがあります。現在、中国では栽培が行われており、市場には栽培品の茯苓が出回ります。

茯苓には古来、「赤茯苓」と「白茯苓」があるとされ、陶弘景は、「白色のものは補い、赤色のものは利す」としています。また、菌核の塊の中にマツの根を包み込んでいるものを「茯神」といい賞用されます。

分類学上、人類は動くものを動物、動かないものを植物としてきました。キノコは当初、植物に分類されてきましたが、今では菌界として独立して分類されています。