ヒシは、ヒシ科の水生植物で、湖沼やため池、水路などに自生し、日本各地で見ることができます。水面に放射状に広がる葉は、秋が深まるにつれて赤く色づき、「菱紅葉」となります。葉は水の上に浮いているように見えますが、水中では長い茎が伸び、水底の泥の中に根をはっています。果実の形が特徴的で、端が長く伸び、2本のとげになっています。

日本には、ヒシの仲間として他に、ヒメビシ、オニビシが見られます。ヒシの仲間の分類は、果実の形が重要です。とげの数が、ヒシでは2本であったのに対し、ヒメビシ、オニビシでは4本であり、ヒメビシは小型で、オニビシが大型である点で見分けることができます。その他に、中国から導入されたトウビシがあり、果実は大型でとげは2本あります。

果実であるヒシの実は食用となり、茹でて食べるとクリのような味がするといいます。アジア諸国では、ヒシの実を食べる習慣があり、台湾では、茹でたヒシの実をたくさん屋台に積んで、販売しているのを見かけました。また、薬用としては滋養強壮、解熱薬とします。

ヒシの実は、昔、忍者が追跡から逃げるときに地面にばらまき、「撒菱(まきびし)」として使用していたといわれます。鉄製の撒菱と比較すると、軽くて持ち運びやすく、いざという時の食料になる等の利点があったと思われます。

現在日本では、福岡県や佐賀県において、ヒシの実が生産されています。佐賀県では、毎年9月下旬から10月下旬にかけてヒシの実の収穫が行われています。クリークと呼ばれる水路で、たらい舟に乗って行う「ヒシの実採り」が秋の訪れを感じさせる風景となっています。