冬の樹木は、地味な印象がしますが、よく見ると枝の先に春の到来を待つ冬芽(とうが、ふゆめ)をつけています。冬芽は夏から秋にかけて形成される芽で、寒い時期は休眠して越冬し、春の訪れとともに花や葉に生長していきます。一般的には、寒さや乾燥に耐えるために、硬い鱗片で覆われています。冬芽の形は樹木の種類によって特徴があり、樹木を見分けるための手掛かりにもなります。

「北国の春」の歌詞にも登場するコブシは、春を告げる花とされ、この花が咲くのを目安に農作業を開始したことから、「田打ち桜」の異名をもちます。コブシの冬芽は多数の毛をもつ鱗片に覆われています。このコブシの冬芽、すなわち花のつぼみは生薬「辛夷」として利用されます。辛夷は、頭痛、鼻づまり、副鼻腔炎などに応用され、辛夷清肺湯、葛根湯加川芎辛夷などの漢方処方に配合されます。

コブシの他に、タムシバ、ハクモクレンなどのつぼみも辛夷として用いられることがあります。コブシとタムシバは日本に自生し、コブシは3月から5月にかけて、葉がでるより先に、芳香のある大型の白い花を開きます。花のすぐ下にある小さい若い葉が、1枚広がるのが特徴です。タムシバは、花のすぐ下には葉がありません。またハクモクレンは中国原産の植物で、コブシよりもやや早い時期に、大きな花を上向きに咲かせます。

これらの花がみられるのは、もう少し先になりますが、じっとしているように見える冬芽の中で、開花の準備がなされています。辛夷は、「蕾の状態で未だ開花せず、よく肥大して内部が充実しているもの」が良品と言われ、開花直前のつぼみを、早春、2月下旬~3月頃に採集するのがよいとされます。