暑い日が続くと、食欲が湧かなくなることもあります。そのような時には、紫蘇や生姜などの香味野菜や、胡麻の香ばしい香りを添えると食べやすく感じられます。胡麻は、日本の食卓になじみ深い食材で、すり胡麻や胡麻塩、あるいは胡麻豆腐や胡麻和えなどとして食されます。

胡麻はゴマ Sesamum indicum L. の種子を乾燥したものです。ゴマの花は、薄紫から白色をした鐘状の花で、7~8月にかけて開きます。花は茎の葉腋につき、下から上へと順に咲いていきます。果実は、長さ約2.5センチの短い円筒形で、その中に種子がぎっしりと並んでいます。果実が熟すとさやが裂けて種子がこぼれ落ちるので、収穫を目的にする場合は、完熟する前に茎ごと刈り取り、乾燥後、茎をたたいて種子を落として収穫します。種子の色は品種により様々で、種皮の色により、黒胡麻、白胡麻、金胡麻などと呼ばれています。

薬用には一般に黒胡麻を用います。また、胡麻を圧搾して得られる胡麻油も薬用になり、日本薬局法に「ゴマ油」の名称で収載され、軟膏などの基剤として用いられています。漢方処方では、胡麻が消風散に、ゴマ油が紫雲膏に配合されています。

また、江戸時代に書かれた『本朝食鑑』では、胡麻の項に、著者の人見必大が次のように記しています。「わたしの厳父はつねに黒胡麻・胡桃肉・クコ葉・五加葉・山椒・白塩などを調製し、細末にして、飯の後で白湯に入れて服用し、これを朝夕の日課にしていたが、老を終わるまで強健・無病であった。わたしも、これを遺訓として、今日までずっと服用しているのである。」と。この著者自身も健康を維持するために、黒胡麻を取り入れていたことがうかがえます。