生薬「杏仁」は、第17改正日本薬局方には、「本品はホンアンズ Prunus armeniaca L.、アンズ Prunus armeniaca L. var. ansu Maxim. 又は Prunus sibirica L. バラ科 Rosaceae) の種子である」と規定されています。

日本では長野県がアンズの産地として有名で、6月の中頃になると、アンズの果実が成熟します。長野県では、食用とするアンズは、果実が大型で味が良くなるようにと品種改良がすすめられてきました。

一方、古くから自生する品種改良がされていないアンズは、果実が小型で、ジャムなどの食用にはあまり適さず、昔から薬用としての杏仁を採取していました。その方法は、地面に穴を掘り、そのなかに成熟した果実を入れ、土をかぶせて果肉部分を腐らせます。果肉部分が腐ってはがれやすくなったものから果核を取り外します。さらに木槌などの道具を用いてたたき割ることにより、果核の中にある杏仁を取り出してきました。

なお、大型果実に品種改良されたアンズは、種子が未熟なものが多くなったり、また、アンズを食品加工する際に加熱したりすることがあるため、薬用には不向きとされます。

近年流通する生薬「杏仁」としては、種子を刻んだものや、粉末状にしたもの、種子の外側にある茶色の仮種皮を除いてあるものなどがあります。杏仁は種子であるため、多くの脂肪油成分が含まれています。そのため空気中の酸素と反応して酸敗しやすいため、できるだけ早めに使用することが良いと思われます。