基源:
Alisma plantago-aquatica subsp. orientale サジオモダカ(Arismataceae オモダカ科)の根茎。

 漢薬「沢瀉」は水分代謝を良くする薬物として五苓散などに配剤される薬物です。

原植物のサジオモダカは全国の池沼や湿地、また都会を離れれば、しばしば町中の
水溝などでも見かけることのある水草の一種です。
古代中国人は、湿地で水に浸かりながらも元気に育つこの植物を見て、きっと水分
代謝を良くする働きがあると考えて服用してみたのでしょうか。

 葉は和名が示すように匙の形をしており、質は薄くてやわらかく、きれいな青緑色で、
長さは30センチ前後あるいはそれ以上にもなり、一見ギボウシの葉に似ています。

近縁植物にヘラオモダカがあり、サジオモダカよりも普通に見かけ、このものは小型
で葉はヘラのように細長いものです。

またお節料理に欠かせないクワイも同じオモダカ科の植物です。

 薬用部は芋状の根茎です。

沢瀉の原植物は一種類で、異物同名品が無い数少ない生薬の一つですが、栽培される
地方、また等級によって生薬の形が違っています。

 一般に「建沢」と称されるのは主に中国福建省で栽培されるもので、鶏卵を一回り大
きくしたような格好をしており、色は淡黄色を帯びた灰白色で、市場では良品とされ
ています。

また「川沢」と呼ばれるものは四川省を中心に栽培されるもので、「建沢」に比べる
と小型で、どちらかというと球形に近い形をしていて、色はやや濃くて褐色がかった
ものが多いようです。また表面にしばしば小さないぼ状の突起があることもあります。
また中にはソロバン玉を大きくしたような形のものもあります。朝鮮半島産のものや
下級品は一般にいびつな形をしており、よく太った生姜のようなものもあり、色も濃い
ものです。

 このように、同じ種類の植物なのに栽培地によって根茎の形が違っているのは不思議で
す。栽培方法や環境の違いも考えられますが、遺伝子的に品種が違っているのかも知
れません。

いずれにせよ、産地や等級によって生薬の形が異なることは、利用する側にとっては一見
して良否を判断する上で都合のよいことです。

沢瀉は大型で色の淡いものが良品であるとされています。

 サジオモダカは以前は日本でも栽培されていました。水田としてしか利用できない農地の
転換作物として価値があると考えられますが、良品質なものを得るのが難しいために換金
作物としては今一つのようで、今では生産されていません。