基源:Foeniculum vulgare ウイキョウ(Umbelliferae セリ科)の成熟果実。

 ハーブはわが国では「香草」と訳され、一般には香りの強い草として、また香辛料や
香味料を意味する言葉として知られていますが、本来はヨーロッパで、香りの有無
や草木また利用部位にかかわらず、広く薬用植物全般を指し示す用語です。

近年のハーブブームのおかげで、昨今ではスーパーマーケットでも種々のハーブが売
られ、手軽に利用できるようになりました。

今回は果実由来のハーブ、ウイキョウについての話題です。

 ハーブの芳香は、一般に揮発性の強い精油成分によっており、植物体の特定の細胞か
ら分泌され貯えられています。

ウイキョウの果実は双懸果と呼ばれ、縦長の2個の果実がくっついて一見すると一つ
のタネのようです。個々の果実は容易に離れ、それぞれの背面に5本の隆起線があり
ます。横切面を顕微鏡で観察すると、その背面の隆起線間に1個ずつ、それに平坦な
腹面側に2個の油道があり、精油はこの中に入っています。他のセリ科植物の果実も
概ねこのようです。

この精油に抗痙攣作用や殺菌作用のあることが知られており、生薬としては大型でや
や緑色した新鮮で虫喰いのないものが良品です。

 ウイキョウはヨーロッパ原産の植物ですが、古来世界各地で広く栽培され、香辛料と
して、また薬用として用いられてきました。本場のヨーロッパでは果実を Fennel
(フェンネル)と呼び、消化不良や疝痛にハーブティーとして用い、とくにミルクに
入れて温めて作った Fennel Tea には驚異的な効果があると言われ、イライラや緊張
を解きほぐす効果もあるようです。また希アルコール水溶液に浸して作ったチンキ剤は、
目薬として疲れ目や目の痛みに利用されます。根もまた消化不良時に調理して食されます。

 一方、ウイキョウは中国へは唐代にもたらされ、以来「茴香」または「小茴香」と称
して、果実また茎葉が小腸の疼痛、疝痛などに用いられてきました。

なお「大茴香」と称されるのはシキミ科のトウシキミの果実(ヨーロッパではスター・
アニスと呼びます)で、果実の形は全く違いますが、成分的にはウイキョウと共通した
アネトールという芳香ある精油を含み、ウイキョウ油として同様に利用されます。

 ウイキョウに類縁の生薬として、デイル(イノンド)、アニス、クミンなどがあり、同
じセリ科植物ですが、それぞれ少しずつ果実の形が違っています。すべて香辛料として
カレー料理などに用いられるほか、薬用としても同様に用いられます。いずれを用いる
かは民族的な習慣によって違っているようです。

 薬用として効果の高い生薬は、世界中に広まる傾向があります。とくに中国人は外来薬
物の導入に余念がなかったようです。とくに唐代にはシルクロードを介してその傾向が
強く、他にハッカやコショウも同時期に薬用として中国に導入されています。

 一方、われわれ日本人は慣れないせいかハーブを利用するのが下手なようです。ハーブ
ティー(煎じ薬)としてのウイキョウの服用量は、多くても一日3g(粉末として1g)
までにとどめること。2gでも頭痛をおこし酩酊状態になるという報告がありますので
ご用心のほどを。