基源:カラスビシャク Pinellia ternata Breitenbach(サトイモ科 Araceae) のコルク層を除いた塊茎。

 半夏は『神農本草経』の下品収載品で,鎮吐,鎮咳,去痰などの要薬とされてきました。原植物のカラスビシャクは,畑の雑草として,どこにでもごく普通に見られる多年生の草本植物で,花が咲くほどに十分育ったものでは,葉は特徴的に3枚に分裂しています。花茎は葉より長く伸びて先端に苞(仏炎苞)をつけ,毒々しく,一見してサトイモ科の植物とわかります。薬用にするのは地下部にある塊茎で,一度掘ってみればわかりますが,案外深い部分にあることが多く,このことが本植物が駆除しにくい雑草となっている所以です。塊茎は普通直径が1〜1.5cmの球形をしています。茎のとれた後が臍のようにへこんでいること,また農作業の合間に採って小遣い稼ぎをしたため,「へそくり」とも呼ばれます。

 生薬「半夏」は六陳の一つで,陳旧品が良いとされています。昔は採取後3年を経過しないものは使ってはいけないと言われていました。実際,カラスビシャクの塊茎を生食すると,局部的に強烈な毒作用を発し,舌,喉,口腔内がしびれ,腫れて痛み,よだれを流し,口を開けるのが困難になります。ひどい場合には呼吸困難になることもあるようです。また催吐作用もあります。そのまま乾燥した塊茎を口にしても同様な目に合います。故に半夏は古来加工を施して利用するものと相場が決まっています。

 現在,日本薬局方では「根茎の肥大する7〜8月ごろに採集し,泥砂を洗った後,ひげ根と外皮を去って,陽乾又は加熱乾燥する。乾燥後イオウで薫蒸して漂白して白色に仕上げることがある」としか記されていませんが,中国では様々な加工がなされています。中国では半夏は加工方法の違いによって以下のように分類されています。