基源:ハチク Phyllostachys nigra Munro var. henonis Stapf(タケ科 Bambusaceae)の葉.

 若い人の中には朝起きれなくて辛い人が多いようですが、逆に夜眠れなくてお困りの方も随分と多いようです。中医学的には不眠症にもいくつかのタイプがありますが、熱邪により煩悶して眠れない人にはこの竹葉がよく効を奏します。

 竹葉は『神農本草経』の中品に収載された薬物です。別名に淡竹葉の名が見られ、『名医別録』では菫竹葉、淡竹葉、苦竹葉の3種が記載されました。そのうち正品の淡竹葉の基源がタケ科のハチクの葉であると考えられており、『本草衍義』には『傷寒論』の「竹葉湯」には淡竹葉を使用することが記されています。

 竹葉は中医学的には清熱剤に分類されます。清熱剤とは読んで字のごとくですが、単なる解熱薬とは違って、裏の熱すなわち病が長く経過した後に残る微熱を解する薬物です。また、清熱薬はさらに細かく清熱瀉火薬、清熱明目薬、清熱涼血薬、清熱燥湿薬、清熱解毒薬、清退虚熱薬などに分類され、竹葉はその中では清熱瀉火薬であり、主に気分の熱邪を解する薬物とされます。

 竹葉の配合された代表的な処方であります「竹葉石膏湯」(竹葉、石膏、半夏、麦門冬、人参、炙甘草、粳米)は、熱病が長引いて体力を消耗した後に、まだ邪熱が残り、そのために微熱、脈数(さく)、煩悶、不眠などの症状を呈するときに適用されます。『傷寒論』には「傷寒解して後、虚羸少気し、気逆し吐せんと欲するは、竹葉石膏湯これを主る」とまとめられています。なお、一般に、熱のためにうわごとを言ったりする意識障害があるときには竹葉よりも、枝先の未だ開かない若葉である「竹葉巻心」の方が良いとされますが、日本市場にはありません。

 なお、現在市場の淡竹葉はイネ科のササクサ Lophatherum gracile Brongn. の全草であって、ハチクとはまったく違った植物に由来するものです。外見上は良く似ていますが、ササクサ由来の商品はハチクに比べると葉が柔らかいので区別出来ます。薬効的にも類似しますが、淡竹葉は利水滲湿薬に分類され、利水薬としての効能が主となっていますので、真の竹葉とは区別して用いる必要があります。なお、ササクサ由来の淡竹葉が世に現れたのは中国明代で、それ以前は先にも書きましたように、淡竹葉の原植物はハチクの葉でした。この点に関しては十分に注意する必要があります。すなわち、処方が開発された時代をしっかりと考証して、宋代以前ならハチクを明代以降ならササクサをと、たとえ同じ名称の薬物であっても処方が開発された時代によって配合する薬物の基源を決めなければならないというわけです。

(神農子 記)