基源:Ganoderma lucidum (Leyss.ex Fr.) Karst.マンネンタケまたはその近縁種(マンネンタケ科Ganodermataceae)の子実体。

 霊芝の名が初めて登場したのは明代初期の『滇南本草』です。また『中日大辞典』によれば芝はマンネンタケの古名であるとされています。霊の文字には(1)鋭敏である,よく利く,(2)明るい,通じている,(3)霊験がある,効き目があるなどの意味があることから,芝にも色々あって,霊芝とは霊験あるマンネンタケと考えることができます。一般に堅くて乾燥しても形が崩れないキノコを万年茸と呼ぶ習慣がありますが,狭義のマンネンタケは北半球の温帯に広く分布し,広葉樹の切り株に生じ,材の白腐れを起こす菌です。

 『神農本草経』の上品には6種の「芝」,すなわち赤芝,黒芝,青芝,白芝,黄芝,紫芝が収載されており,その性味はそれぞれ順に苦平,鹹平,酸平,辛平,甘温とそれぞれ異なります。効能についても,それぞれ順に「胸中の結,心気を益し,中を補い,智慧を益し,もの忘れをしない」,「水道を利し,腎気を益し,九竅の滞りを通じ,察を聡くする」,「主に目を明らかにする。肝気を補い,精魂を安らかにし,仁恕にする」,「咳逆,上気を主治する。肺気を益し,口鼻を通利し,志を強くし,勇悍にし,魂を安らかにする」,「心腹の五邪を主治し,脾気を益し,神を安んじ,忠信和楽する」,「耳聾を主治する。関節を利し,神を保ち,精気を益する。筋骨を堅くし,顔色をよくする」と,色によって異なる記載が見られます。またこれらの芝には,不老延年の効果が期待されており,多くの芝は久食することにより得られますが,紫芝だけは久服によりその効果が得られるとされています。すなわち,赤芝,黒芝,青芝,白芝,黄芝は食用されたのに対し,紫芝は専ら薬用とされており,仮に前者はシイタケのように比較的軟らかく,後者は堅くて食用にならなかったと考えると,紫芝がマンネンタケに相当するのでしょうか。

 李時珍もまた,「芝の類は甚だ多く,霊芝とは山谷の陰に生じ,蓋は黒く,理が赤く,茎は黒く,味は鹹く苦いもので,五色龍芝,五方芝,天芝,地芝,山芝,石芝,金芝,水芝,火芝,雷芝,甘露芝,青雲芝,白虎芝,車馬芝,太一芝など名状は一定ではない」と,その形状が多岐にわたっていることを記載しています。しかし,五行の味によって配されている効能については,「理屈からいっただけのものである」とし,必ずしも正しいとはしていません。

 現在『中華人民共和国薬典』では,「霊芝」として赤芝Ganoderma lucidumと紫芝Ganoderma sinenseを規定しており,ともに性は温で味は甘,後者はやや苦く,効能はともに滋補強壮とされています。キノコの仲間は似たものが多く,芝の仲間も原菌が混乱していたものと考えられます。これら2種以外のGanoderma属のキノコとして,マゴジャクシG. neo-japonicum imazeki,ツガノマンネンタケG. tsuga,コフキサルノコシカケG. applanatum ,熱帯霊芝G.tropicum,薄樹芝 G. capsense,硬皮樹舌 G. tornatumなどがあります。さらに,環境や生育程度によっても子実体の形が異なるようで,民間での分類が複雑になった要因であると考えられます。

 わが国では『大和本草』に収載され,サイワイタケと呼ばれて仙食とされていました。古来種々の種類が記録されてきたことからも,霊芝は非常に重要な薬物であり,また長く服用することにより不老長寿の効果が期待できる,まさに上品の薬物として扱われてきたといえます。

(神農子 記)