基源:アケビ Akebia quinata Decne. 又はミツバアケビ A. trifoliata Koidz.(アケビ科 Lardizabalaceae)のつる性の茎

 「木通」は『神農本草経』の中品に「通草」の原名で「悪蟲を去り、脾胃の寒熱を除き、九竅、血脈、関節を通利し、人をして忘れざらしめる」と記載された生薬で、竜胆瀉肝湯や当帰四逆湯などの処方に配合されています。

 「木通」の古来の原植物はアケビ属植物であることが考証されていますが、中国ではアケビ属に由来する「木通」の利用は少なく、アケビ科以外のキンポウゲ科、ウマノスズクサ科など多くの科にわたる植物種が利用されてきました。2000年度版の『中華人民共和国薬典』では、名称に「木通」と付く生薬として、ウマノスズクサ科Aristolochia属植物由来の「関木通」や、キンポウゲ科Clematis属植物由来の「川木通」は収載されていましたが、アケビ属由来の「木通」は収載されていませんでした。しかし、その後「関木通」を長期服用した際のアリストロキア酸による腎機能障害が問題になったことから、2005年度版の『中華人民共和国薬典』では「関木通」が削除され、アケビ属植物由来の「木通」が新たに収載されました。

 日本では古来,アケビ属に由来する「木通」が専ら用いられてきました。『第15改正日本薬局方』では、「アケビまたはミツバアケビのつる性の茎を、通例、横切したものである」と規定されており、「木通」の日本国内における需要は国産の野生採集品だけでまかなわれています。日本に分布するアケビ属植物には、アケビ、ミツバアケビの他に、これらの雑種であるゴヨウアケビ A.×pentaphylla Makino があります。これら3分類群は葉や花の形態で区別でき、アケビの小葉は5枚で鋸歯はなく、ミツバアケビの小葉は3枚で波状の鋸歯があり、ゴヨウアケビはアケビとミツバアケビの中間的な形態を示します。しかし、「木通」の採集時期である晩秋から冬にかけては葉が落ちていることが多く、また薬材には葉がないので原植物を同定することは困難でした。そこで、近年、日本産アケビ属植物3分類群の木質茎について形態的な研究が行われ、その結果、樹皮表面の色、コルク層の厚さ、コルク石細胞の木化の程度などの特徴を併せて検討することにより、日本産市場品「木通」の原植物の同定がほぼ可能となりました。また、分子生物学的にもゴヨウアケビはアケビとミツバアケビの雑種であることが確認され、さらに、特異的な遺伝子の塩基配列を比較することにより、日本産アケビ属3分類群を区別することが可能となっています。

 アケビ類は、日本では民間療法にも用いられています。蔓や葉、根、果実の皮は、煎じて飲むと浮腫や尿利減少などの水分代謝が悪い場合によいとされています。果肉は胃に熱を持った場合に食します。干した果皮は煎じたり、あるいは黒焼きにしてから粉末として、皮膚病やしもやけ、打撲傷などに外用され、民間的には蔓だけでなく果実の利用も多くみられます。このほか、解熱剤として用いる場合には、春先には植物全体を、秋には果皮を煎じて用いており、時期により薬用部位が異なることもあるようです。また、蔓を短く切り一方を口にくわえて、吹き出した泡を目にいれて点眼薬として用いるなど、一風変わった利用法も知られています。

 アケビやミツバアケビは人里近くの林縁に生えるつる性の植物で、春になると他の植物にからみつこうと新たな蔓がいっせいに伸張しはじめます。その若い蔓は、先端から20センチ程度のところの容易に折れる箇所で摘み取り、ほろ苦さが残る程度にさっと茹でて食べることができます。また、長さ6〜10センチほどの大きな楕円形の果実は熟すと果皮が縦に裂け、軟らかくて白い果肉が現われ、秋の山でひと際目立つ存在です。果肉は甘く、山に足を運んだことがある人なら一度は口にしたことがあるでしょう。果肉だけでなく、果皮も山菜として調理されます。また、蔓はアケビ細工として利用され、長野県の野沢温泉では採集した蔓を温泉につけて軟らかくしてから利用しています。蔓の皮を剥いで仕上げた細工物は蔓の太さが均一で、色は灰白色になり、ひと際美しく仕上がります。

 このように,アケビの仲間は薬としてだけでなく、人々の生活に深く浸透している植物です。

(神農子 記)