基源:キク科(Compositae)のカミツレ Matricaria chamomilla L. の頭状花を乾燥したもの

 カミツレは別名カモミールとしてもよく知られる身近なハーブです。西洋ではハーブティーと言えばカモミールティーを指すというくらい代表的なものです。植物は花付きがよくきれいで、また香りも良いため公園や花壇でも植栽されるようになりました。ここでカミツレ、カモミールと称している植物はドイツカミツレ(ジャーマンカモミール)のことです。

 カミツレはヨーロッパ南部および東部、近東が原産地とされています。現在は全ヨーロッパから西アジア、北アメリカ、オーストラリアにも分布を拡大しています。1〜2年草で、茎は直立し高さ30〜60センチになります。葉は糸状に深裂し、5月から10月にかけてキク科特有の白い花をつけます。頭状花は径約2センチ、舌状花は10〜20個程です。開花時は側面に突き出ていますが、次第に垂れ下がります。内側の管状花は下から上に向けて順次、開花していきます。花はリンゴに似た強い香りがあります。この理由から学名の「Chamomile」もギリシャ語で kamai (地上の)と melon (リンゴ)に由来しています。

 カミツレの薬草としての使用は古く、西洋では紀元前から感冒、頭痛、下痢などに用いられてきました。特に消化器系の症状である、胃痛、胃弱、胃酸過多、腸内ガス、むくみ、疝痛などに適しているとされていました。また、抗けいれん作用もあり、緊張、筋肉の痛みの緩和、生理痛を和らげます。その他、イライラを鎮め、眠りを促す作用があるため子供に向いているとされました。現在でも欧米では医薬品として、内服して発汗、駆風、消炎、健胃、鎮痛薬など、また外用として切り傷、打ち身、皮膚疾患などに使用されています。ハーブティーとして使用する際は軽度の抗炎症作用や鎮痛作用を期待して使用されています。ハーブティーの他に、クリームやエッセンシャルオイルという使用方法もあります。クリームは荒れやかゆみのある肌にすり込んで、エッセンシャルオイルはおむつかぶれにも効果があります。カミツレの薬効のほとんどは含まれる精油成分に起因すると考えられています。それらにはビサボロール類やアズレン類などがありますが特に「アズレン」は胃炎、胃潰瘍、炎症性皮膚疾患などの治療薬の原料になっています。

 一方で注意点として、茶剤を多量に摂取すると嘔吐を起こす危険性がある、浸剤は眼の近くで使用してはならない、洗顔剤でアレルギー性結膜炎を起こす可能性がある、などとされます。刺激性の精油を大量に含むことからの影響です。同様に新鮮な植物は皮膚炎を起こす可能性があること、専門家の指示なしに精油を内服しないこと、そして妊娠期間中には精油を外用してはならないことなどが注意点として挙げられています。カミツレに限らず、西洋とは気候が違う日本で西洋のハーブを使用する場合は注意が必要です。

 日本には江戸時代にオランダやポルトガルから伝えられました。日本でも医薬品として使用されており、「カミツレ花」として第1改正から第6改正まで日本薬局方に収載されていました。現在は日本薬局方外生薬規格に収載され、日本でも鳥取県、岐阜県、岡山県などで栽培されるようになりました。温暖な地方であれば比較的簡単に栽培できる植物です。秋か春に種子をまき、花が満開の時期に頭状花を摘み取ります。

 ドイツカミツレに対してローマカミツレ(ローマンカモミール)と称される植物Anthemis nobilisもあります。この種は多年性であることや頭状花の花床が中空であることなどでドイツカミツレと区別できます。「ローマ」という名称が付けられていますが、ローマには16世紀に伝わるまで栽培もありませんでした。イタリアよりも古くからイギリスで使用されてきたようで、当初はドイツカミツレの代替品として使用されていました。さらにイヌカミツレMatricaria inodoraやダイヤーズカミツレAnthemis tinctoriaなど、和名が類似した植物もありますが、これらはそれぞれ鑑賞、染料目的に使用され、薬用ではありません。

 

(神農子 記)